「革財布のできるまで」その1

革の知恵袋

KAWANOWA」にはたくさんのお財布メーカーさんが参加しています。

 

その中のひとつ「ラモーダヨシダ」さんでは、本社の地下に職人さんが働くアトリエと、財布のできるまでを細かく解説したコーナーがあります。

 

 

まるで“大人の社会科見学”のようなフロアは、業界の人から革小物を知らない人まで楽しめるスペース。

様々な革のサンプルから数種類の漉きまで、「ここまで革財布を分解して、こまかく解説してくれるところはない!」と言い切れるほど。

 

そんな「革財布のできるまでコーナー」を、今回は特別に細かく取材させていただきましたので、皆様にご紹介させていただきます。

 

財布好きな方でもなかなか知ることのない世界ではないでしょうか。

 

1.財布専門店「mic」と「財布のできるまで」コーナー

新御徒町駅から徒歩一分のところにある、「ラモーダヨシダ」本社ビル。

 

今年で創業57年目を迎える同社は、財布業界で初めて「企画部」という部署を立ち上げたり、ラウンドファスナー財布を開発したりするなど、進取の精神に溢れています。

 

地下フロアには財布や革小物の直営専門店「mic」があり、同じフロア内では財布職人さんがミシンを踏んでいる姿も見られます。

 


ここでは、財布に使われる革から様々な道具、職人技術の数々を「財布のできるまで」として展示してあります。

順番に見ていくと、こんなに細かなテクニックが隠されているということに驚きます。

 

2.財布ができるまでのプロセスを学べる場

たくさんの写真パネルとリアルな道具たち。小さな財布たちではありますが、そこにある技術は「ミクロコスモス」という、ラモーダヨシダのスタッフの方がおっしゃっていたことを思い出します。

 

私たちが思っている以上に複雑な構造であり、バッグの倍以上の工程を踏んでいるそうです。
順に追って見てみましょう。

 

(1)皮から革へ

 

 

かばんと同じように、財布も大きな1枚の革から始まります。

「皮から革へ」という鞣しの工程についても、図を交えてわかりやすく伝えています。

 

 

大きな1枚革のサンプルが大迫力! 

 

普通は扱いやすいように革を半分に切って(半裁と呼びます)いますが、このまるまる1枚のものはとても珍しいですね。

 

背中の部分(バック)とお腹の部分(ベリー)では触り心地なども全く違います。

それぞれの部位の特徴を把握しながら、このあと革が裁断されていきます。 

 

(2)革の仕上げ加工の種類

 

 

鞣された革はさまざまな仕上げ加工を施されます。

特に最近では、財布もバッグと同様にカラフルで特徴的な仕上げ加工が施されたものが人気。

 

 

シンプルなヌメ革だけでなく、起毛調、エナメル、型押しといった革が用いられています。


(3)革の裁断

 

 

次に革を裁断します。

裁断のときには、パネルにあるような“クリッカー”という機械を使います。

 

 

まず革を敷き、その上に鋼でできたパーツの型を置いて、上から圧力をかけて革を抜きます。

 

革も部位によっては使えないところがあったり、キズや虫刺され跡などをよけながら裁断していきます。

 

 

切ったあとはこんな網のような状態に。職人さんの腕前で、余すところなく裁断しています。

 

 

革のパーツと合わせて、布製の芯材もこんなにたくさんあります。

革の強度を高め、何度も出し入れするカードやお札で財布を痛めないようにすることも大きいです。

 

 

革が裁断されると、次は縫う部分に「漉き」という薄くする作業を行っていきます。

次回はそちらをご紹介します。

 

KAWANOWAでは、細やかな職人技を駆使した革小物や財布などの製品がたくさんあります。

バッグの倍の工程を経て作られた財布など、改めてよく見てみることで、たくさんの発見がありそうですね。
ぜひお手元で実感していただければと思います。


◆参考資料
株式会社ラモーダヨシダ http://www.lmy.co.jp/lmy/index.html

 


KAWANOWAは、「革とオトナのいい関係」を作っていくサイトです。
革についての、知られざる知識あれこれをこれからもお伝えしていきます。
また次回もお楽しみに。

「日本での、革のうまれるまち探訪」その4
<栃木県 栃木市>

革の知恵袋

「KAWANOWA」は「革の輪」。このコーナーでは「革」についての知識だけでなく、“革のうまれるまち”を探訪してみます。

今回は「栃木レザー」で名高い“栃木県栃木市”。巨大なピット槽でタンニンなめしを行う、日本で数少ない「栃木レザー株式会社」があります。植物の“渋”でなめすタンニンなめしは、時間もコストもかかるので、国内でもこの規模とクオリティで革づくりを行うところは他にありません。

すでにブランドレザーとしても広く知れ渡っている「栃木レザー」。なんと創業昭和12年となんと戦前からの操業とのこと。ヨーロッパだけではなく、日本で脈々とこの手法が受け継がれていることも興味深いです。

1.水に恵まれた革づくり

いままで、「姫路」「墨田区」「草加市」と取りあげてきましたが、それぞれのエリアは大きな「川」の存在があることに注目してきました。今回もやはり「川」の存在が大きいようです。栃木レザーのすぐ横を流れる「巴波川(うずまがわ)」です。

巴波川 栃木市観光協会
巴波川 栃木市観光協会

川べりには蔵造りの建造物が多く残っており、いまでも「蔵の街」として親しまれています。中世から江戸川と通じており、江戸から船で運び込まれた物資を荷揚げするために、この蔵の街が栄えたとのこと。現在では、川に錦鯉が放流されていて、船頭による舟歌が楽しめる観光用の舟が行き来するスポットです。

「栃木レザー」の敷地内には、一級河川が流れていて、ここで一日に使う水は約900トン。大昔はその川に革を吊るして水洗いなどを行っていた頃もあったそうですが今ではもちろんそんなことは一切せず、バクテリアや微生物を使って汚水を浄化し、工場から出す排水には万全の注意が払われています。

やはり「革」と「川」は密接につながりがあります。

2.大規模な“ピット槽”によるなめし

「タンニンなめし」と「クロムなめし」と大きく違うのは、「ドラム」ではなく巨大なお風呂のような「ピット槽」と呼ばれる設備を使って、時間をかけてなめす点です。

栃木レザーの工場内のピット槽
栃木レザーの工場内のピット槽

アメリカから“塩漬け”になって輸入された原皮を、まず水洗いして生革に戻します。牛一頭分だったサイズは、その後の工程で扱いやすいように「半裁(はんさい)」という縦半分のサイズにカットされます。

次は、皮を石灰水に漬け込んで、余分な皮脂や毛を排除していきます。その際、急激な石灰分で皮を傷めないよう、薄い濃度→濃い濃度へ、一日おきに五段階の槽に順に付け込んでいくのだとか。時間がかかる作業ですが、この“前なめし”という工程が、その後のクオリティを左右すると言われるので、慎重に行われます。

工場内に革を吊るし、ゆっくりと乾燥させる
工場内に革を吊るし、ゆっくりと乾燥させる

その次には、タンニンなめしを行うピット槽へと皮を移していきます。使用するのは、主にミモザの木の渋から取った「タンニン」。これを湯で溶かし、石灰漬けと同様に濃いものから薄いものへと順番に皮を漬け込んでいきます。

革の乾燥風景。1枚1枚がとても重く、運ぶだけでも重労働
革の乾燥風景。1枚1枚がとても重く、運ぶだけでも重労働

漬け込む期間は、革によって様々ですが平均して約3週間ほど。クロムなめしのように、ドラムを使ってぐるぐると回転させながらなめすのと違い、漬け込むことでじっくりとタンニンを皮に染みこませ、時間をかけて「皮」から「革」へと変化させていきます。

 

大きなドラムに革を入れて、加脂の作業や洗い加工を行ったりする
大きなドラムに革を入れて、加脂の作業や洗い加工を行ったりする

 

3.品質の証の「赤いタグ」

タンニンなめしが終わった革は、油を入れる「加脂」の作業へと進みます。水絞りされた革と油(魚油が多い)をドラムに入れ、数十分間回して浸透させます。

以前は、ヌメ革というものは“硬くて加工しにくい”といわれていましたが、栃木レザーのタンニンなめし革は、コシがありながら扱いやすいとの評判が高いのも特徴。厚手であれば靴の底革に、また薄く漉いたものであればバッグや小物などにも広く使われています。

栃木レザーを使用したショルダー紐
栃木レザーを使用したショルダー紐

 

見たことがある方もいらっしゃると思いますが、栃木レザーを使った製品には品質の証として、「Natural Tanned Leather」と書かれた赤いタグが付けられています。「栃木レザー」が、もはや素材としてゆるぎない“ブランド力”があることを、改めて物語っているのではないかと感じます。

この赤タグがクオリティの証
この赤タグがクオリティの証

 

KAWANOWAにも、栃木レザーを使った製品がいくつかあります。時間をかけてなめされた革の風合いや手触りを、ぜひお手元で実感していただければとても嬉しいです。

◆参考URL
栃木レザー株式会社(http://www.tochigi-leather.co.jp/
皮革団体BAGYARD(http://bagyard.jp/
TIME&EFFORT レザーの社会科見学(http://timeandeffort.jlia.or.jp/interview/01_1.html
栃木市観光協会(http://www.kuranomachi.jp/

 


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また次回もお楽しみに。