「KAWANOWA」な人たち Vol.7前編
株式会社サンバッグ坂本 代表取締役 坂本 収氏 インタビュー
「“ミスター・クロコダイル”の異名を持つ、クロコ一筋の達人」

KAWANOWAな人たち

IMG_7795.JPG

ミスタークロコダイル!株式会社サンバッグ坂本 代表取締役 坂本 収氏

爬虫類、特に“クロコダイル”の素材を専門に扱うバッグ・革小物メーカーとしてものづくりを続けてきた、(株)サンバッグ坂本。
創業は1931年で、三代目である社長 坂本収さんは「ミスター・クロコダイル」という異名を持つほど、クロコに詳しい達人です。

浅草橋からほど近い自社ビル内には、一枚何十万円もするクロコダイルの革を、職人の目で選別し、裁断し、縫製し、検品するまでの、トータルな工場があります。外からはちょっと想像がつきません。

「今まで内部を見せることはほとんどなかった」というその工場内を、今回は特別な許可をいただき、取材することができました。そこには、想像を越える驚きの光景が広がっていました。

クロコやヘビも「エキゾチックレザー」

潜入レポートの前に、まず基本的な爬虫類(はちゅうるい)についての知識から入りましょう。

爬虫類の革というのは、ワニ(クロコダイル)、ヘビ(パイソン)、トカゲ(リザード)、ダチョウ(オーストリッチ)といった素材に代表されますが、これらは総じて国内では「エキゾチックレザー」と呼ばれています。

古くからファッション業界でも、素材の持つ魅力や付加価値を活かして、様々なバッグや靴、革小物が作られてきました。希少性から、かの「エルメス」のクロコダイルのバッグが数百万円するというのも、良く知られるところです。

そもそも食肉の副産物である「牛革」や「豚革」と違って、エキゾチックレザーの動物たちの中には、野生の種であるがゆえに、乱獲や絶滅から守るべき品種もあります。それらを保護して計画的に利用するという観点に基づいて、現在は「ワシントン条約」というものが存在します。

ワシントン条約に基づく爬虫類取引

1973年にアメリカのワシントンで、世界約81カ国の代表が集まり「野生動植物保護条約」が締結されました。2015年5月現在で、世界181の国・地域が加盟し、条約事務局はスイスのジュネーブに置かれています。

もちろん日本もこれを遵守した取引の元で爬虫類製品は作られており、特に国内で製造されたものには「JRAタッグ(Japan Reptile Leather Industries Association)」が付けられています。国内生産の安心の証と言えます。

「私たちが国内工場で作ったものには、すべてこのタッグまたはシールが付いています。もし付いていないものがあれば、“外国製かも”と考える判断基準にしてもらえればと思います。」と坂本社長。私たちが爬虫類製品に触れる際には、このタッグの存在を忘れないようにしたいものですね。

日本でも数少ない一万枚ものクロコダイル革

さて。爬虫類の知識もアタマに入れたところで、坂本社長に促されて工場にお邪魔させていただきます。

まず最初に伺ったのは、約一万枚ものクロコのレザーが所狭しとストックされた部屋でした。こんな光景は私も初めて拝見、もう圧巻です!

IMG_7623.JPG

棚に積まれたクロコ!クロコ!クロコ!

五段ある棚には、カラー別にクロコがうずたかく積まれていて、裁断される出番を待っています。サンバッグ坂本では現在9割がクロコ、残りの1割がオーストリッチやリザードがメイン。カラーは基本色で6色、革小物などに使っているものを含めると15、6色もあるといいます。

「こんなにたくさんクロコ革を在庫しているところは他にないと、よく革屋さんには呆れられますね(笑)。クロコの革は一枚一枚の“斑(ふ)”の入り方や大きさが違うので、急な発注などいざという時にこのくらいあれば安心できますしね。」と笑う坂本社長。

自然素材の証であるクロコの“斑模様”

爬虫類の革というのは、特に「個体差」を無視することはできません。野生動物ということもありますし、ケンカしたり噛まれたりしたキズがどうしても入ってしまいます。クロコの革は、トゲトゲした背中ではなく“お腹部分”を使うため、多少のキズは自然素材としての証だとも言えます。
クロコの型押しにはない繊細な模様は二つと同じものはなく、本物の証明だとも言われています。

「この部屋で一枚づつ、革を見ながらバッグや革小物の型紙を当てていきます。その時に、どこをどう取るかを判断することが実はとても難しい。高級品でありバッグの顔を決める作業だからこそ、傷を避けたり端の部分をどう処理するかなど、牛革にはない難しさが爬虫類にはありますね。」と坂本社長。

IMG_7623.JPG

革に型紙をあてて…

IMG_7623.JPG

できるのが、マットクロコダイル(センター取り)長財布

型紙の線を引くということは、“これでバッグの顔が決まる”という意味。クロコの斑を見極めつつ左右のバランスなどを峻別するのは、経験値と技がないとおいそれとは出来ません。

ちなみにこの「革選別」と、型紙を置いて革に線を引く「革出し」の作業は、社長みずから行います。今まで何十万枚もの革を見続けてきたベテランの技がものをいう作業と言えそうです。

サンバッグ坂本の工場には、この段階ではまだ足を踏み入れたばかり。
これから製品になるまでしばらく続きます。この先もお楽しみに。

サンバッグ坂本の商品はこちら

文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝

「KAWANOWA」な人たち Vol.6後編
株式会社ラモーダヨシダ 代表取締役 吉田昌充氏 インタビュー
「“財布作り”のパイオニアとして、誇りを持って仕事をしたい」

KAWANOWAな人たち
IMG_7795.JPG

地下フロアの直営ショップ。素敵なお財布がたくさん並んでいます。

直営ショップには「見て触れるゾーン」も

5年前にオープンした東上野本社の地下フロアには、ラモーダヨシダの財布のラインナップが一同に見られる直営ショップがあります。
ヌメ革の手触りが人気の「mic(ミック)」や、直営ショップ限定品でもあるレディスの「micsucco(ミクスコ)」など。財布の専門店というのは全国でも珍しいため、わざわざ探して来店されるお客様も少なくないそうです。

ガラス越しには、財布職人さんたちが実際に働く姿を拝見することができるのも、ここの魅力のひとつと言えます。

そして注目は、職人の手仕事や革の魅力に触れられる“大人の社会科見学”ゾーン。実際に使われる財布の「型紙」、革の「漉き(すき)」、革の縁に線を入れる「ネン引き」といった様々な技術を、実際の革に触れながら体験することができるもの。
一般のユーザーだけでなく、若手職人や販売に携わるスタッフなどにも大変参考になると好評です。
裁断する前の大判の革をそのままダイナミックに展示してあったり、昔ながらの貴重な資料なども揃っているので、財布好き、革好きの人にとっては見ているだけでワクワクする空間と言えるでしょう。

IMG_7623.JPG

IMG_7623.JPG

どんなふうに商品が作られていくのか、過程を知ることが出来てワクワクします。

財布は“ミクロコスモス”

ラモーダヨシダの営業である根本さんに、このショップに関するお話を伺いました。

IMG_7623.JPG

株式会社ラモーダヨシダ 営業 根本由香理氏

「財布の作りのイロハを、一から十まで学べるコーナーは他にはないと思います。小さなパーツを重ねたり、見えない部分の革の処理など、財布は“ミクロコスモス”と言われるほど、細かな技術が結集した世界と言えます。 ただ単に、“お札とコインとカードが入ればいい”ということではなく、折れ曲がる時の屈曲度や、カード段の取り出しやすさなど、コンマ数ミリについて思い悩み、工夫して作っていることをみなさんにも感じてほしいですね。」

直営ショップは、他にも吉祥寺や自由が丘など、計5店舗を構えています。特に秋葉原と御徒町間の高架下にオープンした「2k540(ニケーゴーヨンマル)」という、ものづくりのアトリエと直営ショップが集まった商業施設内では、メンズ、レディス財布ともに大変人気のあるショップです。

ナチュラルなテイストを中心とし、男女のギフト需要としても活用できる、見ていてワクワクするような売り場は意外と少ないもの。動物の革の種類(牛、山羊、コードバン等)によっても、財布の使用感が異なるという事を知る機会は、実はなかなかないのではないでしょうか。

最近吉田社長が開発した新しい財布は、なんとカンガルー革。よく野球のスパイクシューズなどに使われている、軽量感が持ち味の革ですが、財布に使われているのを見たのは初めてでした。実は薄く漉いても丈夫であり、きれいなツヤも出ています。ラモーダヨシダの新定番になる日も近いかもしれません。

財布職人には女性が向いている?!

“財布作りとは当たり前のことの積み重ね”という言葉を何度も使われる吉田社長。凡人は見過ごしてしまうような些末な作業もないがしろにせず、当たり前を繰り返す重要性を説いておられました。

「0.1ミリ狂ったらもうダメという厳しい世界なんです。この“ちょっとの差”で売れたり売れなかったりするので、正確さにはこだわっていますね。少しでも手を抜くと、“やっぱり売れなかったか”と実感するんです。
そしてこの仕事は、コツコツタイプの方が向いていると思います。業界には意外と、女性の職人さんが多いんですよ。」と笑う吉田社長。

男性女性関わらず、新しいことにチャレンジをしていこうとする人には常にチャンスを与えるのがここの社風とのこと。最近では新卒社員も定期採用するようになり若い人たちが社内に増えたことで、新しい風が吹き始めているとのことでした。

◆株式会社 ラモーダヨシダ
東京都台東区東上野1-3-3
03-5816-1811
http://www.lmy.co.jp/

ラモーダヨシダの商品はこちら

「KAWANOWA」では、この春からお財布コーナーが充実してきました。(春財布Collection 2017)
「春財布」ということで、新しい財布を新調すると今年1年金運に恵まれるとのこと。吉田社長のお話しによると、昔の人は「七福神の七色財布」といって、七色が使われた財布を買っていたという時代もあったそうです。確かに今でも、縫い糸が七色というものを見たことがありますね。そんな背景があったとは知りませんでした。

さて、これまでに革小物が得意なメーカーを何社かインタビューしてきましたが、「ラモーダヨシダ」、 「パーリィー」、「野村製作所」といった企業は、それぞれに得意ジャンルが違い、職人たちの腕も違います。
だからこそ、お互いに切磋琢磨しあって生み出してきたアイテムは、それぞれ違って、そして面白い。そんなラインナップを揃えたのが「KAWANOWA」のサイトなのです。

バッグだけのご紹介に限らず、様々な情報や職人さんの横顔などもお伝えしてまいります。
それでは、次回もお楽しみに。

CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝