「KAWANOWA」な人たち Vol.3
『株式会社キクヒロ 代表取締役 菊池 弘太氏 インタビュー』

KAWANOWAな人たち
多種多様な革素材の並ぶ工房にて、株式会社キクヒロ 代表取締役 菊池 弘太氏

異業種から飛び込んだバッグの仕事

工房入り口に掲げられる社名看板

「『ペトラルカ』とは、実は上品でエレガントなライフスタイルを生きる、架空の女性像。響きのいいネーミングにこだわってつけました。」

オリジナルブランドについてこう語るのは、株式会社キクヒロ 代表取締役社長の菊池弘太さん。足立区一ツ家の工房でお話を伺いました。

先代である菊池さんの父親が1970年に創業し、ご自身は10年前に社長に就任しました。もともと金融関係という、全くバッグ作りとは縁のない職場で働いていた菊池さんでしたが、入社されてから2年後くらいには、徐々に新たな販路開拓に乗り出します。

今までメーカー業しか経験がなかった(株)キクヒロではありましたが、菊池さんが今後のビジネスの行方を予測し、ダイレクトにユーザーと結びつくことが重要であることを直感していたからです。ものづくりだけでなく、よりユーザーに近い場所でビジネスが出来るようにシフトさせていきました。

まずは子会社を立ち上げオリジナルブランドを製作。そこから個展を開いて百貨店のバイヤーなどに来場してもらい、少しづつ信頼感と関係性を構築していったといいます。百貨店の平場に並びはじめると、その独特なフォルムや確固たるクオリティに、たちまちファンがつきました。

「問屋さんを介さずに、小売店がお客さんだったので直接反応が聞けたのがとても有り難かったですね。更に『もっといいものを作りたい』という想いがつのっていきました。」

“手を抜かないものづくり”とは

高いクオリティを支える、様々な抜き型

そしていよいよ2009年には、冒頭に語って頂いたオリジナルブランドの「ペトラルカ」が誕生します。

仕事もプライベートも、そしてアフター5も自分らしく楽しむ、凛としたスタイルのある「ペトラルカ」に似合うバッグのラインナップが揃います。「P」の文字が4つ組み合わさった、アクセントにもなるゴージャスなゴールド金具がポイント。

百貨店だけでなく、ショップは青山の「ベルコモンズ」一階にもオープンしました。顧客はいままで様々なブランドを経験してきた大人の女性たち。彼女たちをも満足させる、インポートブランドと比べても遜色のないクオリティは、キクヒロが地道に積み上げてきた“手を抜かないものづくり”でした。

「私たちのものづくりは、外側の顔だけでなく、見えない部分に特に気を遣っています。例えば、バッグのシルエットを決める芯材の種類や、内ポケットにはちゃんと長財布が入るかどうか…など。販売員さんやお客様から上がってくる要望を丹念に拾い上げ、ひとつひとつを商品開発に丹念に活かしていきました。

また、バッグには不可欠な軽さ、ハンドルの握りなど、女性が気になるポイントは徹底的に考えられています。独りよがりなデザインではなく、実際に使ってみて“長く使えるのか”を追求することは重要なポイントですね。」と菊池さん。

ユニークなのは、キクヒロの商品の随所にみられる、革を部分的に“つまんで”ふんわり感を表現したシルエット。全体的なバランスに変化が出て、女らしさも感じられる絶妙なデザインです。

これは実は、服のパターンを手掛けてきた、アパレル出身のパタンナーさんの力が大きいといいます。洋服の“タック”を取るかのように、革をつまむという処理の仕方はペトラルカのオリジナリティ。それがまた、使う人にとっても身体当たりの優しいパターンとなっています。

ペトラルカ独自の“つまむ”デザインは「ジル」にも

プロフェッショナルが集う「KAWANOWA」

丁寧にパーツを縫い進める職人さん

現在、工房には七名の職人さんたちが働いています。細かなディテールへのこだわりは、ベテランの方々の技術の積み重ねで生まれてきたもの。

そして棚にはさりげなく、2008年の「ジャパンレザーアワード」のトロフィーが置かれていました。「たまたまですよ」と菊池さんは笑いますが、数多くのブランドがエントリーする「レザーアワード」を取れるブランドは全国でもほんの一握り。デザインとクオリティのバランス感がここで裏打ちされています。

菊池さんに、ものづくりの喜びとは?と伺ってみました。

「やはり、思った以上のいい商品が出来たときですね。あとは直販をしているので、お客様からリピートをいただき、また欲しいです!と言われるのは本当に嬉しい。」と顔をほころばせていました。

そして、これからの「KAWANOWA」に対してはどんな思いでいるのでしょうか。

「ここには、ものづくりに関して真にプロフェッショナルの方々が集まっています。みなさんのものづくりの姿勢を見聞きしながら、外へと発信し、ひとつのいい事例になっていけば良いと思います。これからが楽しみですね。」

工房の看板わんこも温かく見守ってくれました。

KAWANOWAは、得意ジャンルもテイストも違ったメイドインジャパンのバッグメーカーが集まったサイトです。
バッグのご紹介に限らず、様々な情報や職人さんの横顔などもお伝えしてまいります。

それでは、次回もお楽しみに

キクヒロのブランド「Petrarca(ペトラルカ)」の商品はこちら

「KAWANOWA」な人たち Vol.2『株式会社山万 代表取締役 山田晴彦氏 インタビュー』

KAWANOWAな人たち
「KAWANOWA」な人たち Vol.2『株式会社山万 代表取締役 山田晴彦氏 インタビュー』

笑顔で取材に応じてくださった、株式会社山万 代表取締役 山田晴彦氏

ブルーのアドバン仕上げ財布

アドバン切目ファスナー付束入
アドバン切目ファスナー付束入

 「KAWANOWA」サイトの中で、ひときわ個性を放った財布が並んでいるのをご存じでしょうか。メンズのお財布なのに深いブルー。
そして不思議なムラ感もあります。

これは“アドバン仕上げ”と呼ばれている革の仕上げ方です。
木製家具のような不規則な濃淡が特徴で、アンティークな風合いにファンも多い素材です。靴のローファーなどではよく使われます。

メンズの革小物を得意とする株式会社山万さんでは、このアドバン仕上げを、他ではほぼ見られない「ブルー」で作製しています。すると売り出しと同時に圧倒的な人気シリーズになりました。

引き込まれそうなほどの深い青みが、ほかの財布では見られない個性的な色として、自分買いにもギフトとしてもヒットしています。

アドバン仕上げとは、なめす過程でいったん塗装を行った上に、一段濃い色を重ね、職人さんが上から部分的にバフ掛けをして色を落とします。
そのバフ掛けの程度などは、微妙な強弱のさじ加減で決まると言われているので、まさに職人技の世界。

アドバン仕上げ

ところが山田晴彦社長に伺ってみると、この美しい素材は「実はうまく行かなかった革のサンプルが始まり」だったとのことです。

何度も染色を繰り返しつつ、もっと落ち着いた色になるはずだったけれど、明るい色が出来たのでこれで試作してみたところ、あっという間に人気アイテムとなりました。
「何が成功につながるかわかりませんね」と山田社長さんは笑います。

“好奇心”が新たなものづくりにつながる

その時々で変化する革と常に真剣に向き合い、新たなチャレンジを続けています。

山田社長は2012年に独立して、株式会社山万を立ち上げました。
それまではご実家の財布メーカー「株式会社ヤマダ」に長く在籍され、国産の高品質なアイテムを作ることに専念されていました。
二十数年間、中国に渡ってものづくりの指導も経験されたとのことです。

「わたしは子どもの頃から好奇心旺盛な子で、“この中はどうなっているんだろう”とすぐ興味を抱き、いくつも目覚まし時計を壊しては母親に怒られていました(笑)

中国在住の時も、日本人は変わったものは食べず避けて通りますが、私はほとんど出されたものは食べてみました。“見たことない、食べてみたい”といつも思ってしまうんですよね。
おそらく、未知のものに常に興味を抱くことが、新しい商品づくりや製法を編み出すアイデアにも繋がっていると思います。」

そんな山田社長のチャレンジに満ちたものづくりの精神を、現在は二人の息子さんが引き継いでいます。

「わたしたちは“革”という自然素材が相手です。昨日は昨日、今日は今日で天気や湿度が変われば革の質も変わるし、漉く厚みも微妙に変化します。
いつも同じ厚み、同じやり方でやればいい訳ではないんですよね。ものづくりは常に想像力を働かせながら、“これはどうだろう”“ああするとどうなるだろう”と興味関心を寄せ続けないといけないのです。」
と山田社長は話されます。

財布作りへの想い

手間のかかる作業を一つ一つ丁寧に行う職人さん

財布や革小物といった、手のひらに乗る小さなサイズのものでも、実はバッグひとつを作れるほど、手間も時間もかかっています。
細かなパーツを裁断するところから始め、財布自体が厚くならないように革パーツに細かく「漉き」を入れる作業など、表から見えない部分がとても重要だと言われています。

山万さんでは、今の時代に他では手間がかかりやめてしまったような技術を、いまなお地道に続けられています。

「バブル期の頃などは、とにかく一つでも多く作ることを追求してきて、昔からやり続けてきた大切なことを、置いてきてしまった部分もあるかもしれません。

例えば、自分たちのオリジナル工法で行っている財布の縁の“磨き”は、三人が一時間かけても15本も上がらないほど手間がかかります。
けれど、それをしないとうちの財布ならではの存在感が出ません。
“山万の財布は雰囲気がある”と言ってもらえる陰には、日々の小さな積み重ねが生きている、と言えると思います。

山万さんの財布を形づくるオリジナル工法の”磨き”

作り手である強みを生かした「KAWANOWA」

「このEC全盛時代、バッグや革小物を販売しているサイトは星の数ほどあります。
けれど、運営側がみな“作り手”であるということが、他と異なる何よりの強みではないかと考えました。

“メーカー”という切り口をもっと打ち出して、作る際のストーリー、ものづくりへの情熱などを伝えていくことで、KAWANOWAの独自性を打ち出せると思います。

文字通り、革の“輪”が広がり、作り手や使い手、そして未来の職人さんまでをも巻き込んだ新しいムーブメントが生まれるような、そんな場づくりを目指したい、とのこと。
山田社長が「KAWANOWA」に込める想いも、また熱いものでした。


製品同様、存在感のある社名ボード

KAWANOWAは、得意ジャンルもテイストも違ったメイドインジャパンのバッグメーカーが集まったサイトです。
バッグのご紹介に限らず、様々な情報や職人さんの横顔などもお伝えしてまいります。

それでは、次回もお楽しみに

山万のブランド「FESON」の商品はこちら