「KAWANOWA」な人たち Vol.9前編
ハンドバッグ製造ヒロセ 代表 広瀬和俊氏 インタビュー
「“目も耳も舌も”、すべての感覚と感性を磨き続けること。」

KAWANOWAな人たち

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感性をみがき続ける、ハンドバッグ製造のヒロセ 広瀬和俊氏。

「KAWANOWA」では、パイソンやクロコといったエキゾチックレザー(は虫類など)を使った「ミンティアケース」や「オーガナイザー」を提案されている、ハンドバッグ製造のヒロセさん。今回は、代表である広瀬和俊さんにインタビューさせて頂きました。

ラグジュアリーブランドから着物アーティストまで

広瀬さんは現在「KAWANOWA」限定で、オリジナルブランド「KAZUTOSHI HIROSE」を立ち上げています。「は虫類」という独特な素材を自由自在にあやつり、一見すると“これは無理では…?”と思うような、難しいデザインを形にすることにも果敢に挑戦されています。

誰もが知るような国内の著名ラグジュアリーブランドを含めて、さまざまなOEM(相手先のブランド名による製造)を手掛けることが、現在のメインのお仕事。
サンプルのバッグをいくつか見せて頂きました。世界レベルで活躍される著名デザイナーのものから、着物アーティストの方の“帯”とのコンビ、三角形の不思議な形のポーチなど、手掛けられたアイテムはテイストもフォルムも多岐に渡っています。けれど、どれも“作るには一筋縄ではいかない”と思わせるものばかり。

それを手掛けている職人さんは、現在は外部に6件ほどお付き合いがあり、長く仕事を依頼しているまさにプロフェッショナル集団。三ノ輪の工房には、広瀬さん含め数人のスタッフのみで、ここはまさに広瀬さんがデザインと向き合う“アトリエ”と言えます。

広瀬さんにお話を伺いました。

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工房内の様子。手前にいるのは実の妹さんです。

は虫類の素材の面白さに目覚める

「最初に就職したのは、大手の靴の卸売り会社でした。そこで四年間経験を積み、実際に自分でものづくりを手掛けたいと思い立ち、社員4、5人の小さなバッグメーカーに転職しました。小規模なところであれば、一部ではなく一から十までトータルで仕事を覚えられるのが逆に魅力でした。それからは、独立することを目標に頑張りました。
その会社で作っていたのは、最初は牛革でしたが、しばらくしてエキゾチックレザーも手掛けるようになったのです。その時に初めて、『は虫類は面白い素材だ』ということを発見しました。」
と広瀬さんは語ります。

“は虫類”の素材を手掛けているのは、KAWANOWAの中でも「サンバッグ坂本」さんなどいくつかあります。牛革やヤギ革など大きな個体の革と違って、寸法も小さいうえに独特の“ウロコ模様”をアタマに入れながら、出来上がりを考えていく必要があります。
同じ本革バッグを仕立てる職人さんでも、牛革の職人とは虫類の職人とは別々に存在し、それぞれ“手が違う”ということもよく言われています。

他の素材とは違う“オーラ”

広瀬さんが「面白い素材」ということを実感したのは、は虫類が持つ独特な“オーラ”なのだとか。詳しく伺ってみました。

「エキゾチックレザーは、当たり前ですがまず素材の“単価の違い”というのは大きいです。牛革を扱っていたから余計に感じますが、同じバッグ一本を製作するにしても効率が良い。  そして、牛革のように広い面で型を取れる訳ではなく、ひとつひとつ表情が異なり、おまけに幅も狭い。けれど、その不自由性が逆に面白いのかなと思っています。制約があるからこそ燃える、というタイプでしょうか(笑)」

「加えて、世界のラグジュアリーブランドの多くは、エキゾチックレザーを使ったバッグを頻繁にコレクションに登場させています。仕事上よく都内のショップを視察に行きますが、やはりクロコやパイソンを使ったバッグは、値段も一桁高いうえに、存在感というか、他とは違ったオーラを放っていますね。」

小さな端革も捨てず大切に使いたい

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さまざまな種類の革が積まれています

ヒロセさんの工房には、型を抜いた後のパイソンやクロコの端革が、うず高く積まれています。それぞれの革にはオリジナルの染めやプリントが施されているものもあり、どんなに端革が小さくとも思い入れがあると言います。

「もともと革は命からできていたもの。有難いと思って、最後まで使い切ってあげたいんです。なので、KAWANOWAに出している革小物の『コードクリップ』『ミンティアケース』は、そういった残りの革を活かすために作りました。ブランドごとに染めた特殊な革などもあって、ひとつひとつ表情が違うのも楽しめると思います。」

 特に『パイソン コードクリップ3点セット』は、“迷彩のパイソン”から“ゴールド”、そして“ラメ”など他にないパイソンのオンパレード。聞けば誰でも知っているようなブランドから依頼され、オリジナルで特殊な染めを施したものなど、背景を知るとまた想像がふくらんで面白いですね。

【ヒロセ】パイソンコードクリップ 3点セット

【ヒロセ】パイソンコードクリップ 3点セット

さて、次回は広瀬さんの仕事の裏側についてお聞きします。

文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝

「KAWANOWA」な人たち Vol.8後編
株式会社服部 代表取締役 服部栄一氏 インタビュー
「創業以来の匠の技を活かした縫製技術。業界でも“難もの”を手掛ける」

KAWANOWAな人たち

衂部

後編は、衂部の歴史や職人さんに対する想いをお伺いしました。
前編はこちら

服部社長のところには、様々な難しいデザインの案件が入ってくるそうです。
技術力のある職人さんも減っているご時世、とても希少な存在と言えます。
また服部社長のお話を伺いました。

“難もの”をこなせる実力派

靴づくりとバッグづくりを比べてみると、靴のほうがより“工業生産的”と言われます。
靴の甲革部分を作る“製甲職人”もいますが、最終的には靴の『甲革』と『底材』とを、大型の機械で圧着させるプロセスが必要。その工程があるため、手作りというよりも工業生産の趣があります。

逆にハンドバッグや財布は、一人の職人が最後まで一貫してハンドメイドで作ることが可能です。服部社長のところでは、父親の代から腕の良い職人を抱え、爬虫類製などの和装バッグを作製していました。かっちりしたクラシックなデザインや、難しい爬虫類素材は、昔から得意ジャンルだったそうです。

「特にうちは“難もの”と呼ばれる、他のメーカーが嫌がってしまう難しい形状のものもこなせる技術力があります。背景には、どんな形も作り上げようとするベテラン職人の経験値と、不良品や返品を出さないというスタッフの“志”によるところが大きいと思います。」

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この抜き型を使って、"難もの"が出来上がっていきます。

“作れないものは、ない”

そして腕を磨くきっかけを作ったのが、古くから付き合いのある老舗バッグ小売店チェーンとの取り組み。その会社の社長とは二人三脚で、イタリアの展示会を見たり、新しいデザインの商品を次々と開発していきました。一見無理だと思えるようなテクニックにも、なんとか応えていくことで腕も上がり、色々なデザインもこなせるようになったとのことです。

「基本的に、私たちはNOと言いません。私も職人たちも、“作れないものはない”と思っているんですよ。」

と笑う服部社長。その自負はやはり、父親の代から受け継いだ和装バッグ作りの技術力から来るものと言えるでしょう。

青山に直営をショップオープン

まだメーカー発の直営店など少なかった時代、服部社長は2000年に南青山に、50坪の直営店をオープンします。
「PULCINO(プルチーノ)」という店舗名はイタリア語で「ひよこ」。“お客様とともに成長し続けたい”という想いで付けたネーミングだそうです。服部社長のイタリア好きなところも反映されています。

「やはり嬉しかったですよね。直営店は憧れでした。青山という土地柄、お客さんはブランドものを手にした富裕層の方が多かったですね。
ある時、エルメスを持った女性が、同じ素材でお揃いのものをとオーダーされました。当然数十万円のブランドと同価格という訳にはいきませんが、小売経験がなかったため値付けのバランスがわからず、思った以上に格安で受けてしまったこともありました。『ものづくり』と『販売』というのは、全く違うアタマを使うということも分かりましたね。
張り切ってオープンしたものの、最初に気がかりだった50坪という広さが、徐々に負担になってきました。マーケットの情報を収集する場としても最適でしたが、10年間でショップは幕を下ろしました。」

服部社長のパワフルさがうかがえるエピソードです。ご自身も積極的に売場に立ち、接客されていたこともあったそうです。ものづくりだけに偏らず、様々な経験をされているからこそ、“こんなものがあったらいいな”という発想が生まれるのだと実感しました。またやってみたいと思いますか?という質問には。

「もちろんです!ショップを出したことは全く後悔してない。本当にやってよかった。また資金力があればやってみたいと思っています。」
さすがのバイタリティーですね。

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PULCINO青山店のフライヤー。素敵な店内の様子が伺えます。

技術認定1級試験に合格した職人さんも

株式会社服部には、(社)日本皮革産業連合会で認定している職人のライセンス、<鞄・ハンドバッグ・小物技術認定(皮革部門)>の1級を取得した腕利き職人さんがいます。

この試験は、職人の技術や知識を一定以上の基準によって認定するものですが、やはり1級に合格する人は業界内でも大変希少な存在。難しいものを作れる技術力は、こういった試験という形で外部からも評価されるほどです。彼らの匠の技を生かし、上質なレザーを厳選して、丁寧に縫製しているのが特徴と言えます。

先代から、「量を追い求めることはしない」という姿勢を貫いてこられた服部さん。職人さんに対する工賃も、他よりも高く出しているとのこと。

「イタリアでは、職人の方がホワイトカラーの人たちよりも職業的には上だ、という風土があるんです。日本ではなかなか難しいけれど、私自身が職人さんたちをリスペクトすることで、日々の仕事に張り合いと自信を持ってもらいたいと思っています。」
との言葉に、職人さんへの深い愛情を感じます。

全メンバーが集まるKAWANOWAに

そして、KAWANOWAをこれからどんな場にしていきたいですか?との質問をぶつけてみました。

「理事長という立場もありますが、KAWANOWAにはぜひ全メンバーが参加してほしいと思っています。そのためにも“売れる”ということが重要ですけれどね(笑) なんだか面白そうだ、盛り上がっているな、という雰囲気にしていって、情報もどんどん発信していこうと思います。せっかく作り上げた場なので、みんなが参加して楽しいと思えるようにしていきたいですね。」

【PULCINO】エレフォー・バック

【PULCINO】エレフォー・バック

服部社長のお話しは様々な経験に裏打ちされてとても面白く、インタビューでもアッという間の2時間。まさかの革やバッグの歴史にまで、話が深まりました。そして最後は、「ぜひ鳥越神社の祭りに来てください!」という台詞でお開きに。そんなに熱く語って頂いたので、今年はぜひお祭りに伺って、お神輿をかつぐ服部さんを拝見したいと思いました。服部社長、ありがとうございました!

★物知りコラム

“ハンドバッグ”と“鞄(かばん)”は、厳密に言うと同じジャンルではありません。ハンドバッグは婦人物のバッグ、鞄は紳士物のかっちりしたビジネス向けのバッグを指します。
紳士物の鞄の発祥は、着物の収納などに使用してきた“柳ごうり”作りから始まりました。「兵庫県豊岡市」が、現在国内では鞄の一大産地で、国内のメンズの著名かばんブランドはメイドイン豊岡のことが多いです。

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◆株式会社服部
東京都台東区浅草橋5-5-2 03-3863-2448

 

文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝