「“良い革製品”てなんだろう?」に答えて頂きました その2
答えるひと:株式会社コロンブス 市川貴男さん

革の知恵袋

前回に引き続き、「良い革製品とは」にお答えいただくのは、 国内でレザーケア商品のトップシェアを誇る株式会社コロンブスの市川貴男さんです。

今回は、革についてちょっと突っ込んだ質問を投げかけてみます。
一般ユーザーのみなさんが、普段なんとなく疑問に思っていることについて、少し専門的な目線から、且つ分かりやすく答えていただきました。

Q.そもそも日本にも「革をなめす工場」はあるんですか?

「栃木レザー」という名前を聞いたことがあると思います。
栃木県にある「タンニンなめし」を行う大きなタンナーさんですが、ナチュラルなメンズバッグなどによく使われています。

他にも日本を代表するのが、牛革のタンナーが集まる「兵庫県姫路市」やその隣の「たつの市」。はるか戦国時代から、武将の甲冑などに革は使われていました。
古い歴史を持つタンナーが集まっている場所と言えます。

また、国内で唯一自給できる革に「ピッグレザー」がありますが、その豚革をなめすタンナーが「東京都墨田区」に集まっています。
他にも「和歌山市」はエナメルの革が得意で、「埼玉県草加市」では爬虫類や牛革などのタンナーがあります。

これらの場所に共通しているのは、「豊富な水源」「土地が確保できること」。革のなめしは「川」が必要と言えるほど「水」が不可欠なのです。どの場所も大きな川のそばにあり、革をなめす際に重要な「洗い」や「染め」の際の水として重宝しています。

Q.革の種類では、「牛革」がいいと言われますが、実際のところはどうなんですか?

実は「革」を取るために動物を屠殺することはありません。あくまでも、私たちが食べる「食肉」を取ったあとに残った「副産物」として、無駄のないよう皮を活用しているんです。

ということは、豚もあれば羊もある、お国柄によってはヤギや鹿なども食べているところもあります。食文化が違えば産出される革も違う。革として利用される動物の種類って、実は色々あるんです。

もちろん、革として代表的なものは「牛」ですが、日本でなめされる牛革の原皮(加工される前の原料皮)は、ほぼ100%が北米やオーストラリアからの輸入。日本でも牛舎などで牛は飼われていますが、ホルスタインが多いので革にするとなると、クオリティが若干劣ります。アメリカ、オーストラリアでは、ステーキやハンバーガーなどをケタ違いに食べる国民なので、原皮も産出されやすいんです。

実は日本でも、100%自給している上に、海外へ輸出まで行っている革に「豚」があります。日本の豚の消費量が多いことが背景ですが、中国や韓国も同じようにブタを食べる国のはず…。と思いきや、彼らは「皮まで食べてしまう」ので原皮が残らないんです。食文化って面白いですよね。

ざっと上げると、牛、水牛、馬、羊、山羊(ヤギ)、豚、ワニやトカゲなどの種類が存在します。それだけでなく、牛でいえば「年齢(生後〇年)」や「性別(雄、雌、去勢されたかどうか)」によっても革の特徴が変わってきます。やはりキメの細かい若い「仔牛革」は、牛革のなかでは最上質のグレードと言えるでしょう。

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Q.よく「イタリアの革はいい」と言われたりしますが、イタリアの革と日本の革の違いってなんですか?

イタリアと日本の革には、実はそんなに大きな違いはないんです。あえて一番大きな違いは「国民性と歴史」かもしれません。あとは「水質の違い」です。

イタリアでは日本では比べ物にならないくらい、カラフルな革ものを生産します。けれど日本ではご存知のように、黒や茶色といったベーシックなものがメイン。ヨーロッパの革の歴史は大変に長く、生活に密着しているので、「革は色落ちするものだ」「いい革には傷があっても仕方ない」という「革文化」が成熟しています。そのため様々な革のバリエーションが豊富で、大胆な色出しなどにもチャレンジしています。

とはいえ国内のプロの方に聞けば、「イタリアの革は二回目のリピートをすると前の色とのブレが大きい」とか、「革の傷に関してクレームを受けてもらえない」といった悩みもあるそうです。
日本では“傷”や“色むら”などには大変厳しく、色はベーシックでも革のクオリティに関してはシビア。なめし職人の技などは、ヨーロッパの職人にも負けない技術を持っていると確信しています。

また、「水質」に関していえば、ヨーロッパの水は「硬水」、日本は「軟水」です。なめす際に「硬水」は革にハリ感を与え、「軟水」は革にソフト感を与える。染める時も微妙な発色の違いが現れるそうです。

どちらの革がいいかどうかは、もう好き好きですね。イタリアの革、日本の革双方にしっかりした職人がいて、ものづくりの背景がきちんとあることも知ってもらえると嬉しいですね。

日本国内に、こんなにタンナーさんがあるということは、あまり知られていないことかもしれません。一枚一枚に個体差があって、工業製品のように一度に大量には作れない「革」。 実は、「革製品」を使うということは、歴史に根差しているということを忘れてはならないのですね。その土地の水、職人さんたち、企画する人たちが一体となって、ひとつの製品を作り上げていることを教えていただきました。
では次回が、最終回となります。

 

◆協力 株式会社コロンブス 企画室 市川貴男さん、小高公次さん
東京都台東区寿4-16-7 03-3844-7111
http://www.columbus.co.jp/

 

KAWANOWAは、「革とオトナのいい関係」を作っていくサイトです。
革についての、知られざる知識あれこれをこれからもお伝えしていきます。
また次回の「良い革製品てなんだろう?その3」のコーナーをお楽しみに。

「“良い革製品”てなんだろう?」に答えて頂きました その1
答えるひと:株式会社コロンブス 市川貴男さん

革の知恵袋

KAWANOWAで扱っている革製品。それらは国内の職人さんたちが丁寧に作り上げ、企業それぞれに匠の技がぎっしりと詰まっています。革好きな方であれば「これはいい革だな」とわかるかもしれませんが、革もの初心者の方にとっては見分けるのは至難の業。

そこで今回は、国内でレザーケア商品のトップシェアを誇る株式会社コロンブスの市川貴男さん(レザーケアのページにもご登壇)に、“いい革の見分け方”を教えて頂きました。

様々なケア用品を作るために、多方面からあらゆる革の知識を仕入れ、どうすればキレイになるかを徹底して学んでこられた、業界でも稀な“革のきわめびと”。
革の初心者目線で質問を投げかけてみました。

Q.そもそも「革」と「合皮」はなにが違うんですか?

革の歴史はとても古く、人類が狩りを始めた時代からあったと言われています。たとえば90年代には、アルプスの氷河の中から革製品を身に着けた、5,300年前の男性(アイスマン)が発見されました。ヨーロッパの青銅器時代にも立派に革が製造されていたんですね。彼らは仕留めてきた動物の肉を食べたあとに残る“皮膚”を無駄なく利用するために、植物の渋や灰などでなめして“革”として活用していました。
「皮」と「革」は読み方は同じでも、なめす前と後で漢字も変わるのです。ちなみに「皮」は英語だと「SKIN」、「革」だと「LEATHER」です。

合皮が生まれたのは、歴史ある革に比べると新しく、工業生産が可能になった近代になってからです。 合皮の種類には「合成皮革」と「人工皮革」の2つがあり、リーズナブルで市場に出回っているのは「合成皮革」。ベースの生地にPVC(ポリ塩化ビニール)やPU(ポリウレタン)を貼ったもので、見た目や触感を天然皮革に近づけたものです。人工皮革は「エクセーヌ」や「クラリーノ」と言われるもので、モノによっては革より高いものもあります。

一見すると革も合皮も変わらないと思われがちですが、本物の革には「経年変化」という特徴があります。ケアを続ければ最適な油分と水分を含んで、柔らかく味わいが出てきます。
ところが合皮の場合、ポリウレタンが「加水分解」してしまうことから、およそ2年ほどで表面が変質して割れたりしてきます。久しぶりに押入れからバッグやスニーカーを出したらボロボロだったということはありませんか? それが加水分解です。

本革はきちんとお手入れをすれば、一生ものとも言われます。もとは生きものだったので、触るとほのかに暖かさも感じられるでしょう。親から譲り受けたりする人も少なくないので、革ものは“人生に寄り添う品”と言ってもいいのかもしれません。

もちろんシーズンごとに、トレンドの合皮のバッグを買い替えて楽しむという方もいますので、どちらが良いとは一概には言えませんが、人生の相棒として革ものを嗜むことも、大人のライフスタイルかもしれませんね。

Q.よく「なめし」と言いますが、どんなことなんですか?

「タイコ」と呼ばれる機械。この中に革を入れてなめします。

「なめし」は「鞣し」と書きます。まさに「革」を「柔らかく」すること。
動物から取った後の「皮」は、そのままでは生ものですので腐敗するため、「鞣し工程」を加えなくてはなりません。(鞣しを行う工場を「タンナー」と言います) とはいえ、「鞣し」をするのは実に手間のかかる作業なのです。動物から取った「皮」についている余分な肉や脂を取り除いてから、石灰に漬けたり鞣し剤を使ったりして、皮の主成分である「コラーゲン」構造に働きかけ、しっかりとした「革」に仕上げていきます。そうすると、乾燥しても収縮することなく、耐熱性や耐薬品性、柔軟性などの特徴が出てきます。

なめされた革がスプレーガンで色を吹き付けられていく様子。

その際によく聞くのが「タンニン鞣し」と「クロム鞣し」の2種類です。聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

Q.名前くらいは知っています。具体的には、タンニン鞣しとクロム鞣しの違いって何ですか?

一言でいえば、「じっくり、しっかり、希少性」がタンニンで、「早い、柔らかい、大量生産」がクロムと言えます。ではそれぞれを見ていきましょう。

1.「タンニン鞣し」

タンニンとは植物の“渋”のことで、樹液などから抽出したタンニンを主成分とするなめし剤を使います。これは古代エジプト時代から行われている、最も古いなめし方法です。国内で代表的なのが「栃木レザー」で、濃度の異なるなめし液を別々の槽(ピット)に分けて用意し、段階的に漬け込んでいく方法を取ります。広大な場所も必要なのがこのなめし方なんです。タンニンなめしの特徴を挙げてみると。

  • なめしには数ヶ月を要し、手間と時間がかかる
  • クロムなめし(下記参照)に比べて、伸びや弾力性が少ない
  • タンニンなめし独特の色の変化から、経年変化を楽しめる
  • 染色や仕上げも施されないプレーンなものを「ヌメ革」と呼ぶ


2.「クロム鞣し」

クロムとは「塩基性硫酸クロム」を鞣し剤に使った鞣し方のこと。これは19世紀に発明された比較的新しい技術です。
ただ“クロム”という名前だけあって「人体に有害なのでは?」と思いがちですが、それは「六価クロム」のこと。こちらは「三価クロム」なので害はなく、むしろ人体の必須元素とも言われます。特徴を挙げてみると。

  • なめしが短時間で済み、大量に生産できる
  • 現在は革製品全体の85%がクロムベースで製造されている
  • 特に柔軟性にすぐれている。また耐熱性、染色性がよい
  • なめした直後の革は、このクロムの影響で淡いブルーをしていることから「ウエットブルー」と呼ばれる
 

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まず第1回目の、市川さんへの「“良い革製品”てなんだろう?」コーナーはここまで。聞けば聞くほど、いろいろな革の知識が出てきて、話が尽きませんでした。今度はどんな“革への旅”をご一緒できるでしょうか。

 

◆協力 株式会社コロンブス 企画室 市川貴男さん、小高公次さん
東京都台東区寿4-16-7 03-3844-7111
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革についての、知られざる知識あれこれをこれからもお伝えしていきます。
また次回の「良い革製品てなんだろう?その2」のコーナーをお楽しみに。