「KAWANOWA」な人たち Vol.13後編
オイカワプロダクツ 代表取締役 及川 貴史氏 ロングインタビュー
「仙台の地で、東北らしい革工房を目指す!」

KAWANOWAな人たち

前編では及川さんが職人になったきっかけから、震災を乗り越えて、新ブランドを立ち上げるまでをご紹介しました。後編は及川さんのこだわりや、若い世代への思いについて教えて頂きました。

金具へのこだわり

なんでも自分でやってみる、がモットーの及川さん。
革製品には欠かせない金具にもこだわり、工房の中には自身で作るための小さな炉まであります。金具作りと一口で言っても、鋳造やプレス、削り出しなど様々な手法があります。

削りだしで作られた金具

今では優秀な金具屋さんとつながりを持てたので、自分で作ることは少なくなったそうですが、自らやってみたからこそ、どんな作業が難しくて、どのくらい時間がかかるか分かるようになったとのこと。金具屋さんとの交渉でも話がスムーズにでき、信頼関係を築きやすくなったようです。

最近では出会いにも恵まれ、30年以上のキャリアを持つカービング(革に柄を彫刻する手法)の職人ともコラボレーションすることに。制作途中の長財布を見せていただきました。

革を彫刻するカービング

ネイティブ・アメリカンの雰囲気を醸し出し、型押しでは出せない凹凸感とクッキリしたラインがこだわりを感じさせます。
自身でもカービングの技術を習得している及川さんですが、

「やはり一つの技術に何十年と向き合ってきた方には敵わない。そういうエキスパートと協業して、本当に一流と呼べる物を提供していきたい」
とカービングレザーを手で撫でながら熱く語ってくれました。

革をもっと若い世代に

KAWANOWAでも取り扱っているイタリア製高級革“マレンマ”についてもお聞きしました。素材の表記としては同じ「牛革」でも、実際の革のクオリティはピンキリです。


高級なものはイタリアやドイツの革です。ヨーロッパでは牛の種類がそもそも異なり、革製品に適した、きめ細やかで丈夫な革が作られているそうです。

マレンマを使用したラウンドファスナー長財布


なめしの文化にしてもヨーロッパでは400年の歴史があり、日本ではまだ100年ほど。イタリアやドイツのような発色がどうしても出せなかったり、常に同じ色を出すということも、自然が相手なので難しいようです。そんな中でマレンマの革は、品質もよく、高級感があり、素材としての魅力もある。


「高すぎない価格で提供して、良いものを特に20代30代の若い方に使ってもらって、革を好きになってもらいたい。革がもつ独特の“色気”をぜひ知ってもらいたいです。」

最近では地元の中学生の職業体験も受け入れ、より若い世代に革に対して身近に感じてもらえる機会を増やしているとのこと。
「彼らが将来革職人になるとは思っていませんが、例えばファッションデザイナーになりたいと思っている子に、自分が身につけている物がどんな流れでできているのかを知ってもらうことは、本人の為になると思っています。
特に職業を決めていない子でも、来る前より革を身近に感じてもらえれば、それだけでも嬉しいです。」


「また、革は食肉からの副産物。”命あるものからの恵みを、捨てずに活かす”、それが命をいただく人間の責任だと思っています。」


と及川さん。

革製品技術試験への挑戦

「とにかく好きだからやっている。それだけです。」と謙虚に語る及川さんですが、技術の向上も欠かしません。
「革製品技能試験」という、日本皮革産業連合会が主催する革製品製造技術の認定試験がありますが、及川さんはまだ日本に2,30人程度しかいない「1級」保持者のひとりです。


3級から1級までレベル別になっていますが、中でも1級はとても難しく、10年以上の実務経験を持つ方でも合格率20%以下という難関ぶりだとか。

確かな技術の証ですね!

試験は、知識を問う学科試験と、実際の技術を見る実技試験に分かれています。
実技では、課題である2枚のデザイン画を製作し、それを作って送る事前作品審査。それに合格すると、東京の工房で実際に試験官の前で技術を見せる実技試験があります。(1級の場合)

仕事もしながら勉強をする時間を作るのも大変でしたが、事前作品審査のためのバッグ作りも時間がかかり大変だったとのこと。
しかし晴れて技能試験に合格することで、仕事を受ける時に営業しやすくなったそうです。

東北は革業界が盛んではないので、本当に頼んで大丈夫なのかと心配されるお客様も多かったところ、1級を取ったことでお客様から安心して仕事を任せてもらえるようになったのはメリットの一つでした。

また1級合格者の多くが、30代から40代と比較的及川さんと年が近いこともあり、革業界の衰退が叫ばれる中では頼もしく、よい刺激になったそうです。

東北らしさを生かした製品づくりを

最後に、及川さんの今後のビジョンを語っていただきました。
「東北らしさというのは、せかせかしていないことだと思います。時間をかけてでもこだわる部分はこだわり抜く。そして小ロット多品目で勝負する。
そんな形で自社製品のシェアを広げつつ、東北の革製品制作の“問い合わせ窓口”になっていきたい。浅草とは違ったものづくりをしていけたら嬉しい。」

インタビューを終えて、改めて思いました。
革職人とは、命を頂く革素材や、工業化されない手仕事によるものづくりなど、現代社会が効率化を求める中である意味軽視してきた、しかし人として大切な気持ちが詰まったものに、向き合う職業ではないでしょうか。

及川さんの取り組みにエールを送ります。
 

◆オイカワプロダクツ
宮城県仙台市若林区沖野3−9−17 022-353-9068

http://www.o-products.jp/

 

文責 ピー・アイ・スクエア株式会社 KAWANOWA 前川弘樹

「KAWANOWA」な人たち Vol.13前編
オイカワプロダクツ 代表取締役 及川 貴史氏 ロングインタビュー
「仙台の地で、東北らしい革工房を目指す!」

KAWANOWAな人たち

東日本ハンドバッグ工業組合の加盟組織の中で唯一、宮城県・“杜の都”仙台市に本社を置く、オイカワプロダクツ
仙台駅からバスで20分程走ると、閑静な住宅街の中に工房や倉庫が見えてきます。こちらではパートさんふくめ、数名で財布、バッグ製造を行っています。

仙台駅に降り立ちました!

店舗は持たず、OEMとオリジナルブランドを手掛けているオイカワプロダクツを率いるのは、
日本皮革産業連合会が認定する「ハンドバッグソフト1級技術者」資格、「ハンドバッグハード1級技術者」資格を持つ代表の及川貴史氏です。
早速、お話をうかがいました。

バイク好きが高じて革職人の道へ

及川さんは、仙台で建築会社を経営している父の元で、小さい頃から住み込みの職人たちとともに育ち、学校を卒業してからは左官として働き始めました。

オイカワプロダクツ 及川 貴史氏

しかし20代半ばで、当時趣味だったバイクに関連する仕事につきたいと一念発起。バイク愛好家が集まりそうな業界として、ライダー向け革製品メーカーへと転職します。

当時、バイカー向けのレザーアイテムブランドとしてその名が知られていたメーカーへ電話をかけると、「すぐ来い!」と言ってもらえ、及川さんはその日のうちに、仙台から埼玉へ向かいました。

「すでに結婚して子どももいましたが、その時はもう無我夢中で…。今思うと可哀想なことをしましたね」と及川さん。
しかし、そこでの経験は今のものづくりのベースになり、のちのち大きな影響をうけることになります。

最初に配属されたの製造部。一つの製品の全工程を一人で手作りしていくという、当時としては画期的なやり方を貫くメーカーでした。さらに、縫製は足踏みミシンか手縫いで行うというこだわりぶり。

「ここで、『革製品がどうやって作られているのか』、『どうやって人の手に渡るのか』、を知ることができました。他部署の様子も横目で見ていたので、感覚として自分の中に刷り込まれていったんだと思います。」と及川さん。

バッグに使用される部品が並んでいます。

生まれ故郷仙台での独立

4年間、製造部で経験を積んだ後、残してきた家族のために、仙台に戻ることを模索しはじめます。
メーカーの代表とも相談して、仙台に直営店を新規出店することを目標に、ショップでの販売経験も半年積みました。

しかし、時代の流れは非情でした。ユーザーであるバイク愛好者が急激に減ってきて、ライダー向けが主力だったメーカーの売り上げは低迷。仙台への出店も思うように進まず、直営店の話は白紙に戻ってしまいました。

それをひとつのきっかけとして、せっかくならば、東北の地で革製品の工房を立ち上げようと2006年に独立しました。
「最初は分からないことだらけ。でもメーカー時代の記憶を頼りに何とか物作りを始められました。」

東日本大震災の影響

少しずつ機材も揃えていき、仕事もそれなりに入ってくるようになった矢先の2011年、東日本大震災が発生。

津波の直接的な被害は免れたものの、1,2km先には津波が到来し、1週間電気が止まりました。そんな状況の中、お客様に迷惑をかけてはいけないと、及川さんは足踏みミシンで作業を続けたそうです。

製品を何とか納めて、片付けもひと段落したのもつかの間、大きな余震が発生して、また一から片付ける羽目に。
「これはやっていられない」と一時的に仙台を離れる決意をします。

向かったのは、以前から興味があった日本の伝統工芸の織りや金箔など昔ながらの日本の文化を今でも色濃く残している石川県。そこでも様々なものづくり文化に触発され、満を持して仙台に戻ります。

まず手をつけたのは設備の拡張と商標登録。商標は現在では3つ取得していて、KAWANOWAにも出品している「BASE LEATHER」。革以外の素材も扱う「BASE +」。そして女性をターゲットにした「SPARROW」です。

そして設備の拡張を進める際に、東北には革製品づくりのための情報が足りないことに気づき、2014年に「東日本ハンドバッグ工業組合」に加入しました。

「浅草界隈はやはり革業界が盛んだし、技術がすごい。様々な業界内の情報も入ってくるようになり、設備も増やせました。」と及川さん。

前編はここまで。及川さんの行動力に驚かされました。
後編はオイカワプロダクツのこだわりについて、更に伺っていきます。お楽しみに!

◆オイカワプロダクツ
宮城県仙台市若林区沖野3−9−17 022-353-9068

http://www.o-products.jp/

 

文責 ピー・アイ・スクエア株式会社 KAWANOWA 前川弘樹

「革製品技能試験認定証授与式 2018」レポート

KAWANOWAさんぽ

こんにちは。革を持ちたくなる季節がやってきました!

 

今回のKAWANOWAさんぽは、2018年9月11日(水)14:00から恵比寿ガーデンプレイスにて執り行われました先日行われた革製品技能試験授与式の様子をレポートさせて頂きます。

革製品技能試験は、「革靴」、「かばん・ハンドバッグ・小物」、「ベルト」、「手袋」と大まかに4つあり、更に細かな分野に分かれます。

 

特に驚いたのは革靴製造技能試験です。『裁断』・『製甲』・『底付』・『仕上』と細かな工程ごとに試験があり、靴づくりの複雑さを垣間見ました。また、鞄・ハンドバッグ・小物技術認定試験は、『鞄部門』・『ハンドバッグ部門』・『小物部門(紳士・婦人)』と製品ごとに3部門に分けられていました。

 

「バッグは縫製する、財布は貼り合わせる、という工程の違いがあり、仕立て方が全く異なる」と以前、KAWANOWAメーカーさんからお話を聞きましたが、試験の内容からもそれがうかがえました。

 

今年は1級から3級まで113名の合格者が輩出。授与式には出席できる方のみでしたが、全体的に若い職人さんが多く、日本の皮革製品の技術向上、後身の育成が徐々に進んでいっている印象を受けました。


KAWANOWAに参加いただいている企業の職人さんも多数いらっしゃいましたのも、嬉しく思いました。

以前、KAWANOWAな人たちでもご紹介した蔵前にて「財布塾」を開かれている財布職人の吉川信和さんも小物紳士部門1級に合格されておりました。

 

会場外では、受賞者たちが手掛けた製品が展示されていましたが、小物(財布)は黒一色。色やデザインが入らない分、縫製やコバなどの仕上げが際立ちます。

  

革製品技能試験は今までに築いてきた自分の実力や知識を検定、そして認定するもの。職人さんが今まで培ってきた歴史や自信の裏付けや、現在の自分の技術力を客観的に確認するために活用されているようです。


合格者からは、「やるなら極めたい」、「先輩に教えられたことを後輩にも教えていきたい」というコメントを聞き、日本の革製品がよりよくなっていくのを楽しみに感じました。

 

以上、初めて革製品技能試験授与式の様子をご紹介させて頂きました。

この日は、ジャパンレザーグッズマイスター認定証授与式も行われていました。

こちらは新ためてご紹介させて頂きます。お楽しみに!

 


革製品技能試験とは…
革製品技能試験は一般社団法人 日本皮革産業連合会(JLIA)・全日本革靴工業協同組合連合会・日本鞄ハンドバッグ協会・日本服装ベルト工業連合会・日本手袋工業組合が主催となって実施している皮革産業に携わる方々の資格試験です。
試験制度を通して皮革技術に対する評価を高め、職人の技術と社会的・経済的地位の向上を図るとともに、ものづくりに興味がある人材を増やし、皮革産業の未来を担う後継者育成につなげることを目的としています。