「KAWANOWA」な人たち Vol.7後編
株式会社サンバッグ坂本 代表取締役 坂本 収氏 インタビュー
「“ミスター・クロコダイル”の異名を持つ、クロコ一筋の達人」

KAWANOWAな人たち

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後編では、工場内をすみずみまで見学させていただきます。

古い機械も大切に使う

さて、大量のクロコの革の山を拝見し、坂本社長により革出し(型紙を置く)までを見せていただきました。(「KAWANOWA」な人たち Vol.7前編
同じ部屋には二人の職人さんが作業されています。クロコを扱って数十年というベテランの職人さんは、数ミリの細かな手作業にも関わらず、のりづけや裁断などがとにかく手早い。手技につい見とれてしまいました。

次に革漉き(革を薄くする)の機械がある部屋へ。
ここでは昔ながらの機械を修理しながら大切に使っています。40年ほど前から使っている、デジタル表示などのないアナログな漉き機は、さきほどのベテラン職人さんがもっぱら使用しているとのこと。

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中央にあるダイヤルで調整します

「若い職人はもうこの機械は使えないんじゃないかな。でも古い機械には新しいものでは出せない味わいがあるんです。これからも捨てないつもりですよ。」と坂本社長。
なるほど、すべて新しくしてしまっても、ものづくりの味わいが出せるわけではない、ということを教えて頂いた気がしました。

 

奥には、「グレージングマシン」という、革の表面にツヤを出すための機械があります。
長い腕のようなものの先に“メノウ”の円柱を付けて、革の表面を何度も強く磨きツヤを出していきます。実演していただきましたが、マットな状態からあっという間に、エナメルのようにツヤツヤな状態に変化するのは魔法のよう。
「誰でもできそうだけど、こすればこするほど色が濃くなってしまうので、全体を同じ濃さにグレージングするのは、かなりの職人技なんですよ。」と説明を頂きました。確かにすぐに黒光りしていくので、ムラにならず均一にツヤを出すのはとても難しそうでした。

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足元のペダルを踏んで動かします。

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こすった後がこちら。先端の色がすこし違うのが分かりますか?

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グレージング前(左)、グレージング後(右)

和装の定番から、TV通販、インターネットへ

上階に上がるとそこは縫製の部屋。広々したフロアには、十名ほどの縫製職人さんがミシンを踏んだり手縫いをしたり。驚いたのは、男性に混じって若い女性の方も少なくないことでした。「最近かばんを作りたいという職人志望の人は多いですね。」と坂本社長。ものづくりのすそ野の広さを感じ、嬉しくなります。

黒や茶色だけでなく、最近では鮮やかなカラーやグラデーション加工を施した色など、さまざまな表現が見られるようになりました。ちょうどイエローやブルーといったカラフルなバッグが仕立てられているところです。そして驚いたことに、裁断されたクロコ革の表面には、キズがつかないようにと“ラップ”が張られていました。さすがな気遣いですね。

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ラップが張られたクロコ革

「昔は爬虫類のバッグといえばとても高単価で、和装の方やミセスが多かったですよね。でもいまは、テレビ通販やインターネットなどの影響で、若い人たちにも広がり、エキゾチックレザーがカジュアルなシーンでも持たれるようになりました。とはいえ製作段階では、キズが付かないように、細心の注意を払って作業しています。」

“クロコダイル革”にこだわった先代の姿勢

実は社長の先代は、ワシントン条約が締結されるずっと前に、「カメの革(手足)」を使ったバッグを大ヒットさせたのだとか。当時は本当に珍しく、作ったそばから売れていったそうです。

しかし、ワシントン条約後は捕獲が厳しくなり、カメのバッグは製造中止に。代わりに様々な革を探した結果、付加価値の高いクロコで勝負することを決めたのだとか。現在の「東日本ハンドバッグ工業組合」の前身である「東京袋物製造同士会」を立ち上げたのも先代でした。クロコダイル革を日本で最初に扱うにあたり、ヨーロッパのクロコダイル製品のメーカーに出向き、加工技術を学び日本で試行錯誤を重ねながらハンドバッグを作ったそうです。

坂本社長の代になってからは、より軽いバッグを探求したり、新しい販売チャネルへと広げるなど、様々なチャレンジを重ねています。また素材を無駄にせず、型を抜いたあとのクロコの素材は、カラー別に箱を用意しそこにストックしています。エシカルなものづくりへの意識は、坂本社長の代で徹底されています。

「製造のプロフェッショナル」が集まったKAWANOWA

KAWANOWAサイト内では、13色ものカラーバリエーションがある「シャイニングクロコダイル」の財布が人気アイテムです。ユニークなのが、「ガーベラ」「ミンク」「ルサーン」といった、なんとも想像力をかきたてる個性的な色のネーミング。

グレージング加工を施したクロコダイルを贅沢に使った一品で、「こういう風に革出し(線書き)をしたんだな」ということが、工場を拝見して理解できたので、財布になる前の段階からイメージが膨らみます。

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シャイニングクロコダイル財布

この「KAWANOWA」がどんな場になれば?という質問を、坂本社長に投げかけてみました。

「KAWANOWAは、“製造のプロフェッショナル”が集まって運営しているので、みんながそれぞれ自分の製品には圧倒的な自信を持っています。確かな商品しか並んでいないので、みなさんには安心して購入していただきたいですね。
これからは、KAWANOWAならではの、ものづくりから見た視点、知る人ぞ知る情報などもアップして、革の面白さや奥行きを味わってもらえる場になっていくと、嬉しいです。」
と坂本社長は語ってくださいました。

今回は、敷居が高いと思っていたエキゾチックレザーの奥深さを、たっぷりと教えて頂きました。
牛革とはまた違う面白さがあって、学びになりました。また伺いたいと思います!ありがとうございました。

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◆株式会社サンバッグ坂本
東京都台東区浅草橋2-28-17 03-3862-2291
http://www.sunbag-sakamoto.co.jp/



文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝

「KAWANOWA」な人たち Vol.7前編
株式会社サンバッグ坂本 代表取締役 坂本 収氏 インタビュー
「“ミスター・クロコダイル”の異名を持つ、クロコ一筋の達人」

KAWANOWAな人たち

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ミスタークロコダイル!株式会社サンバッグ坂本 代表取締役 坂本 収氏

爬虫類、特に“クロコダイル”の素材を専門に扱うバッグ・革小物メーカーとしてものづくりを続けてきた、(株)サンバッグ坂本。
創業は1931年で、三代目である社長 坂本収さんは「ミスター・クロコダイル」という異名を持つほど、クロコに詳しい達人です。

浅草橋からほど近い自社ビル内には、一枚何十万円もするクロコダイルの革を、職人の目で選別し、裁断し、縫製し、検品するまでの、トータルな工場があります。外からはちょっと想像がつきません。

「今まで内部を見せることはほとんどなかった」というその工場内を、今回は特別な許可をいただき、取材することができました。そこには、想像を越える驚きの光景が広がっていました。

クロコやヘビも「エキゾチックレザー」

潜入レポートの前に、まず基本的な爬虫類(はちゅうるい)についての知識から入りましょう。

爬虫類の革というのは、ワニ(クロコダイル)、ヘビ(パイソン)、トカゲ(リザード)、ダチョウ(オーストリッチ)といった素材に代表されますが、これらは総じて国内では「エキゾチックレザー」と呼ばれています。

古くからファッション業界でも、素材の持つ魅力や付加価値を活かして、様々なバッグや靴、革小物が作られてきました。希少性から、かの「エルメス」のクロコダイルのバッグが数百万円するというのも、良く知られるところです。

そもそも食肉の副産物である「牛革」や「豚革」と違って、エキゾチックレザーの動物たちの中には、野生の種であるがゆえに、乱獲や絶滅から守るべき品種もあります。それらを保護して計画的に利用するという観点に基づいて、現在は「ワシントン条約」というものが存在します。

ワシントン条約に基づく爬虫類取引

1973年にアメリカのワシントンで、世界約81カ国の代表が集まり「野生動植物保護条約」が締結されました。2015年5月現在で、世界181の国・地域が加盟し、条約事務局はスイスのジュネーブに置かれています。

もちろん日本もこれを遵守した取引の元で爬虫類製品は作られており、特に国内で製造されたものには「JRAタッグ(Japan Reptile Leather Industries Association)」が付けられています。国内生産の安心の証と言えます。

「私たちが国内工場で作ったものには、すべてこのタッグまたはシールが付いています。もし付いていないものがあれば、“外国製かも”と考える判断基準にしてもらえればと思います。」と坂本社長。私たちが爬虫類製品に触れる際には、このタッグの存在を忘れないようにしたいものですね。

日本でも数少ない一万枚ものクロコダイル革

さて。爬虫類の知識もアタマに入れたところで、坂本社長に促されて工場にお邪魔させていただきます。

まず最初に伺ったのは、約一万枚ものクロコのレザーが所狭しとストックされた部屋でした。こんな光景は私も初めて拝見、もう圧巻です!

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棚に積まれたクロコ!クロコ!クロコ!

五段ある棚には、カラー別にクロコがうずたかく積まれていて、裁断される出番を待っています。サンバッグ坂本では現在9割がクロコ、残りの1割がオーストリッチやリザードがメイン。カラーは基本色で6色、革小物などに使っているものを含めると15、6色もあるといいます。

「こんなにたくさんクロコ革を在庫しているところは他にないと、よく革屋さんには呆れられますね(笑)。クロコの革は一枚一枚の“斑(ふ)”の入り方や大きさが違うので、急な発注などいざという時にこのくらいあれば安心できますしね。」と笑う坂本社長。

自然素材の証であるクロコの“斑模様”

爬虫類の革というのは、特に「個体差」を無視することはできません。野生動物ということもありますし、ケンカしたり噛まれたりしたキズがどうしても入ってしまいます。クロコの革は、トゲトゲした背中ではなく“お腹部分”を使うため、多少のキズは自然素材としての証だとも言えます。
クロコの型押しにはない繊細な模様は二つと同じものはなく、本物の証明だとも言われています。

「この部屋で一枚づつ、革を見ながらバッグや革小物の型紙を当てていきます。その時に、どこをどう取るかを判断することが実はとても難しい。高級品でありバッグの顔を決める作業だからこそ、傷を避けたり端の部分をどう処理するかなど、牛革にはない難しさが爬虫類にはありますね。」と坂本社長。

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革に型紙をあてて…

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できるのが、マットクロコダイル(センター取り)長財布

型紙の線を引くということは、“これでバッグの顔が決まる”という意味。クロコの斑を見極めつつ左右のバランスなどを峻別するのは、経験値と技がないとおいそれとは出来ません。

ちなみにこの「革選別」と、型紙を置いて革に線を引く「革出し」の作業は、社長みずから行います。今まで何十万枚もの革を見続けてきたベテランの技がものをいう作業と言えそうです。

サンバッグ坂本の工場には、この段階ではまだ足を踏み入れたばかり。
これから製品になるまでしばらく続きます。この先もお楽しみに。

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文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝