「KAWANOWA」な人たち Vol.10前編
世界に“日本の高度な技術”を伝えていく/有限会社ミヤ・レザークラフト
「独自の“財布づくり”を通じて、パートナーシップが繋がり想いが広がる」

KAWANOWAな人たち

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あたたかい笑顔で迎えてくださった、襯潺筺Ε譽供璽ラフト 代表取締役 宮昌弘氏

「KAWANOWA」のなかで、とりわけ“薄い財布”を提案しているメーカー、ミヤ・レザークラフト。オリジナルブランドである「THINly(スィンリー)」は、徹底的に「薄さ」を追求したデザインという点では、右に出るものがないほど。

また山形・新庄市にて財布の国内工場を立ち上げられ、早くも9年目に突入しています。職人を育てることをミッションに掲げる、有限会社ミヤレザークラフト 代表取締役である、宮昌弘社長の想いにも迫りました。

ベルト工場の端材で作り始めた“革小物”

現在代表取締役である宮昌弘氏は、有限会社ミヤ・レザークラフトの3代目。祖父の時代は、“ろうけつ染めを施した革資材を卸していたという歴史があります。

そこから宮社長の父上がベルトメーカーに入社し、そこで出る革の端材を財布に仕立てたのが、「革小物づくり」の始まりだったとか。

以前は「墨田加工」という社名だったのを、宮社長が代表取締役に就任した平成2年から、世界にも通用する「ミヤ・レザークラフト」という新社名に変更しました。現在は、財布に特化したものづくりに軸足を置き、高齢化している職人たちのものづくりの技を、山形工場の若い工員たちに伝承するべく、宮社長自身が日々奔走されています。

宮社長にお話しを伺いました。

「ようやく山形工場も9年目を迎え、職人は14名となりました。実はいま、工場で働いている全員が”女性”なんですよ。彼女たちの繊細な感覚と、何事にも黙々と取り組んで決してあきらめない姿勢は、工場の原動力になっています。今後は更に増やしていって、30名は育てていきたいですね。」

と力強く話して下さいました。財布職人がすべて女性という工場は、国内でもとても稀有な存在です。

女性パワーが支える国内財布工場「山形ファーレ」

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山形ファーレ 工場内の様子

よく言われることですが、日本でのものづくりが疲弊してしまった要因は、おもに90年代から00年代頃に海外へと生産現場を移していったという経緯が挙げられます。職人たちに仕事が回らなくなり、ものづくりの跡を継ぐ人も減少しました。

そんな時代に、宮社長は日本でのものづくりにもう一度回帰する必要がある、と肌で感じていました。そしてあるご縁から、山形の革小物職人の方々と知り合います。彼らから「この地で革小物の工場を一緒に立ち上げたい」という熱烈なオファーを受けました。

一念発起し、宮社長は山形県新庄市に、財布・革小物の国内工場である「山形ファーレ」を立ち上げます。2008年のことでした。

メンバーはすべて山形在住の地元の方々。地方都市では、女性が手に職をつけて一人前に働ける仕事は、おのずと限定されてしまうのが現実。なのでこの「山形ファーレ」に応募される方はとても多いのだそうです。

最初は4、5人だったメンバーも、今では13人。全員が社員として登用されています。財布を作る仕事は小さいだけに、コンマ数ミリのズレでも許されない精密な作業。女性達は妥協を許さず、黙々と作業をこなします。

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妥協のない正確さがこのステッチに表れています

「聞けば誰でも知っているような高級ブランドの財布なども作っていますが、触った時の絶妙な“ふっくら感”や、ステッチの目のキレイさなど、ブランドバリューに恥じないものづくりであるという自負はあります。 彼女たちのプロ意識はとても高くて、私が“このくらいはいいんじゃないの?”と言っても、“そういう訳には行きませんから”と許してくれないんですよ(笑)。私よりも手厳しい。」

と宮社長は嬉しそうに話してくださいました。

海外生産と国内生産の違いについては、技術力だけでなくひとりひとりの”職人としてのプロ意識の違い”、”妥協を許さない姿勢”、これが日本で作る大きな意味なのではないかと実感しました。

パートナーシップ・メンバーの存在、石井仁さん

 ミヤ・レザークラフトのものづくりを支えているのは、職人やスタッフだけではありません。様々な立場からアイデアや技術を提供する、“パートナーシップ・メンバー”の存在がとても大きいのです。

お一人目は、画期的な「縦型四列カード入れ」の仕様を考案した、株式会社ゴッドブレスの代表である石井仁(いしいひとし)氏。財布デザイナーとして54歳でセカンドキャリアをスタートさせ、ミヤ・レザークラフトの機能的で独創的な商品をプロデュースしています。

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この「THINly」の薄型財布は石井氏が長年考えた出したもので、作りたかった商品は「カードの収納に特化」した財布でした。実用新案も取得した、独自のデザインです。

石井氏は1977年に革小物の製造卸会社に入社され、多くのブランドのOEM(相手方ブランド生産)や海外ブランドの輸入業務にもたずさわられた経緯をもつ、業界での大ベテランです。

カード25枚がスッキリ収納される財布

宮社長とのご縁がつながってのち、誰も見たことのない“縦型カード入れ”財布は1年間の試作品開発を経て、ようやくマーケットに登場しました。その圧倒的な使い勝手の良さから、メディアや百貨店のバイヤーからたちまち注目を集めます。なんと「DIME」誌上の通販では、「THINly」の財布が二年連続一位を獲得しています。

「KAWANOWA」でも、「カードをスッキリ収納財布」というネーミングで五型がラインナップされています。
取材当日も、実際にカードが何枚入るのかチャレンジして頂きました。あれよあれよと、計25枚がすっきり収納。プラスしてお札はもちろん、背面のファスナーポケットにはしっかり小銭も入ります。

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カード25枚 実際に入れて見せていただきました!

「男性はお尻のポケットに財布を入れる人が多いから、車に乗る時などどうしてもカードが痛んだり曲がったりしてしまいます。縦型四列にすれば、ヒップに沿って曲がり、シルエットを崩すことなく収納することができます。最近ではラウンド財布よりも、薄型、小型財布のニーズが高まっていますね。」と宮社長は語ります。

【THINly(スィンリー)】カードをスッキリ収納財布(束入)

【THINly(スィンリー)】カードをスッキリ収納財布(束入)

財布の新しいデザイン開発には、とてつもないエネルギーが注ぎ込まれているということに気づかされました。諦めない姿勢には頭が下がります。

さて、次回はもう一人のパートナーメンバーの方についてお聞きしました。

文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝

「KAWANOWA」な人たち Vol.9後編
ハンドバッグ製造ヒロセ 代表 広瀬和俊氏 インタビュー
「“目も耳も舌も”、すべての感覚と感性を磨き続けること。」

KAWANOWAな人たち

ハンドバッグ製造ヒロセ

独自の手法で染められたパイソンの革、角度によって色が変化するんです

前回まで、広瀬さんがエキゾチックレザーと出会い、その魅力に目覚めたお話を伺いました。
今回はその仕事が生み出される背景がまたユニークでしたのでお伝えします。

「感覚を感性」を磨くために不可欠なショップ視察

広瀬さんは月に3回から4回は、表参道や青山などのラグジュアリーショップの視察に欠かさず出かけているそうです。
ものづくりに専念する方で、月にそれだけショップ視察に時間を割かれる方というのは、そう多くはないと思われますが、広瀬さんはこれについてはこだわりを持っていました。

「うちの本業はOEMメーカーですが、言われたデザインをそのまま右から左へと作ることはしません。相手ブランドの方と、あくまでも『一緒に考えてより良いデザインを提案する』という“ディレクション”的な仕事だと思っています。最終的にはそれは『感覚と感性』がすべての世界。

先方も時には、無理難題を言ってくるところもありますが、基本的には仕事は断らないようにしています。何とかそれを形にし、プラスアルファの提案ができるようにするのが自分なりの仕事のスタンスですね。」
と広瀬さん。

型

写真では伝えきれないほどの美しいカラーでした

目も、耳も、舌もすべて鍛えること

インタビュー中で何度も出てきた言葉が、“感性”
とにかくこれを衰えさせないように、普段から「五感を鍛える」ことを欠かさないようにしているとか。これについては。

「来たデザインに対して、『この素材はこうするともっと生きる』とか、『こういう仕様を加えるのはどうか』など、プラスアルファの提案をしてより良い商品に近づけるアドバイスもします。そのためには、自分の感性や感覚を磨きつづけることが大切だと思っています。

例えば、映画館美術館に行ったり、生のライブを聞いたり、話題のレストランに出かけたり、スイーツを食べたりと、新しい情報は頻繁にチェックしていますね。“目も、耳も、舌も、すべて鍛える”と言うことでしょうか。

話題の作品を鑑賞する、トレンドの飲食店に出かけるということは、ある意味で今の時代を代弁する“空気感”を取り入れることだと思います。
映画や絵画に登場する、カラー、ファッション、雰囲気などは、それだけでも創作のヒントになりますね。」

 

感性プラス、健康体でいることが大切

私たちインタビュアーでも知らなかった、いま注目のスイーツ店もご存知だったのにはびっくり。またアカデミー賞を受賞した映画「ラ・ラ・ランド」も早々とチェックされていて、歌の部分だけでなく、服の細部までも観察されているのには驚かされました。

また、身体の健康も維持しないと仕事に反映してしまうとのことで、身体を鍛えることも欠かさないそうです。様々な角度から“感性を磨く”ことでしか、自分自身の仕事はバージョンアップしていかない、という言葉が印象的でした。

ストイックな部分も持ち合わせつつ、最近見た映画の感想や美味しいスイーツショップの話など、なんとも引き出しが多く話題豊富な広瀬さん。こんなところも、ぶれない軸を持ったメーカーでいつづける所以なのだと実感しました。

オリジナルデザインもこれから増やしたい

【ヒロセ】パイソンレディースバッグ アーク

【ヒロセ】パイソンレディースバッグ アーク

長くこの仕事を手掛けていながら、なかなかオリジナルブランドを立ち上げる機会がなかったという広瀬さん。このKAWANOWAサイトに参加されたことをきっかけに、刺激をもらっているとのこと。

「今まで依頼された仕事に対して、“自分なりのエッセンス”を入れて提案することが多かったので、あえてオリジナル商品を作るということには重きを置いてこなかったのかもしれません。

けれど、いざ『KAWANOWAにオリジナルを』と言われたときに、自分の中の“作りたいもの”を探ってみると、今までとは別の発想が必要だということに気づきました。今回はとても良い刺激をもらっていると思います。
オリジナルのデザインバリエーションをもっと増やして、今後は“は虫類の面白さ”を伝えていけるといいですね。」

広瀬さんが手掛けられるオリジナルを、これからも楽しみに待っていたいと思います。
ありがとうございました。

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文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝