「日本での、革のうまれるまち探訪」その4
<栃木県 栃木市>

革の知恵袋

「KAWANOWA」は「革の輪」。このコーナーでは「革」についての知識だけでなく、“革のうまれるまち”を探訪してみます。

今回は「栃木レザー」で名高い“栃木県栃木市”。巨大なピット槽でタンニンなめしを行う、日本で数少ない「栃木レザー株式会社」があります。植物の“渋”でなめすタンニンなめしは、時間もコストもかかるので、国内でもこの規模とクオリティで革づくりを行うところは他にありません。

すでにブランドレザーとしても広く知れ渡っている「栃木レザー」。なんと創業昭和12年となんと戦前からの操業とのこと。ヨーロッパだけではなく、日本で脈々とこの手法が受け継がれていることも興味深いです。

1.水に恵まれた革づくり

いままで、「姫路」「墨田区」「草加市」と取りあげてきましたが、それぞれのエリアは大きな「川」の存在があることに注目してきました。今回もやはり「川」の存在が大きいようです。栃木レザーのすぐ横を流れる「巴波川(うずまがわ)」です。

巴波川 栃木市観光協会
巴波川 栃木市観光協会

川べりには蔵造りの建造物が多く残っており、いまでも「蔵の街」として親しまれています。中世から江戸川と通じており、江戸から船で運び込まれた物資を荷揚げするために、この蔵の街が栄えたとのこと。現在では、川に錦鯉が放流されていて、船頭による舟歌が楽しめる観光用の舟が行き来するスポットです。

「栃木レザー」の敷地内には、一級河川が流れていて、ここで一日に使う水は約900トン。大昔はその川に革を吊るして水洗いなどを行っていた頃もあったそうですが今ではもちろんそんなことは一切せず、バクテリアや微生物を使って汚水を浄化し、工場から出す排水には万全の注意が払われています。

やはり「革」と「川」は密接につながりがあります。

2.大規模な“ピット槽”によるなめし

「タンニンなめし」と「クロムなめし」と大きく違うのは、「ドラム」ではなく巨大なお風呂のような「ピット槽」と呼ばれる設備を使って、時間をかけてなめす点です。

栃木 ピット槽
栃木 ピット槽

アメリカから“塩漬け”になって輸入された原皮を、まず水洗いして生革に戻します。牛一頭分だったサイズは、その後の工程で扱いやすいように「半裁(はんさい)」という縦半分のサイズにカットされます。

次は、皮を石灰水に漬け込んで、余分な皮脂や毛を排除していきます。その際、急激な石灰分で皮を傷めないよう、薄い濃度→濃い濃度へ、一日おきに五段階の槽に順に付け込んでいくのだとか。時間がかかる作業ですが、この“前なめし”という工程が、その後のクオリティを左右すると言われるので、慎重に行われます。

革の乾燥1
革の乾燥1

その次には、タンニンなめしを行うピット槽へと皮を移していきます。使用するのは、主にミモザの木の渋から取った「タンニン」。これを湯で溶かし、石灰漬けと同様に濃いものから薄いものへと順番に皮を漬け込んでいきます。

革の乾燥2
革の乾燥2

漬け込む期間は、革によって様々ですが平均して約3週間ほど。クロムなめしのように、ドラムを使ってぐるぐると回転させながらなめすのと違い、漬け込むことでじっくりとタンニンを皮に染みこませ、時間をかけて「皮」から「革」へと変化させていきます。

革の乾燥3
革の乾燥3

3.品質の証の「赤いタグ」

タンニンなめしが終わった革は、油を入れる「加脂」の作業へと進みます。水絞りされた革と油(魚油が多い)をドラムに入れ、数十分間回して浸透させます。

以前は、ヌメ革というものは“硬くて加工しにくい”といわれていましたが、栃木レザーのタンニンなめし革は、コシがありながら扱いやすいとの評判が高いのも特徴。厚手であれば靴の底革に、また薄く漉いたものであればバッグや小物などにも広く使われています。

栃木レザーを使用したショルダー紐
栃木レザーを使用したショルダー紐

 

見たことがある方もいらっしゃると思いますが、栃木レザーを使った製品には品質の証として、「Natural Tanned Leather」と書かれた赤いタグが付けられています。「栃木レザー」が、もはや素材としてゆるぎない“ブランド力”があることを、改めて物語っているのではないかと感じます。

KAWANOWAにも、栃木レザーを使った製品がいくつかあります。時間をかけてなめされた革の風合いや手触りを、ぜひお手元で実感していただければとても嬉しいです。

◆参考URL
栃木レザー株式会社(http://www.tochigi-leather.co.jp/
皮革団体BAGYARD(http://bagyard.jp/
TIME&EFFORT レザーの社会科見学(http://timeandeffort.jlia.or.jp/interview/01_1.html
栃木市観光協会(http://www.kuranomachi.jp/

 


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革についての、知られざる知識あれこれをこれからもお伝えしていきます。
また次回もお楽しみに。

たくさんある革の種類【まとめ】 その2
<牛以外の動物>

革の知恵袋

「KAWANOWA」は「革の輪」だけあって、ご覧のように革もののかばん、小物を得意としています。

 

その革にも実は様々な種類があります。

 

「牛」「羊」「豚」など動物の種類だけでも十種類以上、そして一口で「牛革」といっても成長の度合いや性別によっても様々な呼び名があります。


このコーナーでは、材料としての革の種類をわかりやすく「まとめ」てみようと思います。

 

 

【牛以外の動物の種類】

 

前回は「牛革の種類」についてお伝えいたしました。

 

革の代表格ではありますが、もちろんそれだけが革ではありません。ほかにも様々な種類の革があり、大人の革と子供の革の名称、また使う部位によっても名称が変わるのも興味深いところです。

 

 

 

(1) 山羊(ゴート、キット)

山羊(ヤギ)はアジアやアフリカなどの途上国では、家畜として飼育されており種類も豊富で、皮は生活の中で様々に利用されています。とても柔軟で繊維の密度が濃く、銀面(革の表面)は摩耗性に優れています。

 

 

◆ゴート(大人の山羊革)

 

大人の山羊革は、表面に独特なシボ感(凹凸)が表れているのが特徴になります。牛革と一番違うのはこのポイント。

牛革と比べて薄手ではありますが、摩耗性・耐久性にも優れている革です。

バッグ、靴だけでなく、手袋やレザージャケットなどにも使用されます。

 

【azzuni(アッズーニ)】本革コンビ縦型トートバッグ L Capa

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◆キッド(子山羊の革)

子山羊の革は、大人と違ってシボ感が目立ちません。染める時にキレイに発色するので、高級品に使われることが多いようです。

また革が小さなサイズなため、大判のバッグには向かず、カラフルな色出しのサンダルや手袋などに使われることが多いです。

 

 

 

(2)ひつじ(シープ、ラム)

世界的に見ても品種の多い動物で、その品種によって革の性質が異なります。

丈夫さではゴートには及びませんが、軽くて柔らかく、防寒素材に優れています。

ちなみに「シープスキン」は英語表記、「ムートン」は仏語表記です。ムートンの方がモコモコしているイメージですが、実は同じ意味でした。

 

 

◆シープ

生後1年以上の大人をシープと呼び、直っすぐな毛を持つ「ヘアシープ」と、巻き毛の「ウールシープ」に分けられます。

ヘアシープが多く生息するのは熱帯地域。

 

身体を守る温かい毛や脂肪が必要ないので、毛皮としての利用価値はあまり高くないのですが、革そのものが強度にすぐれ、表面もキメ細かくなっています。

ゴルフ用手袋やウエアなどに使われます。

 

ウールシープは温暖〜寒冷の地に生息する、「毛」を刈り取る羊。

寒さに耐えるため脂肪も蓄えているので、革そのものの強度はそれほどでもないですが、軽さと柔らかさがあります。

靴や手袋、コートやジャケットなどに使われます。モコモコした毛をつけたままの毛皮は、ムートンブーツや寒冷地仕様のジャケットなどに使われます。

 

 

◆ラム

生後1年以内の子羊の革をラムと呼びます。あまり産出されないので高級品として扱われます。

毛穴が小さくキメ細やかで、滑らかでしっとりした質感が特徴です。柔らかく軽いのでウエアや手袋などに使われます。

 

 

 

(3)豚(ピッグ)

 

豚は、日本が唯一輸出している革でもあります。豚を食する文化としては韓国や中国も同じですが、実はあちらは皮ごと食べてしまうので、原皮が産出されません。

 

国内では、特に墨田区にピッグスキンのタンナーさん(鞣し業者)が多いことでも知られています。

豚革の最大の特徴は、毛が三本づつまとまって生えていて、毛穴模様が特徴です。

これが通気性の良さをもたらし、薄くて軽いため、靴のライニング(裏側の革)や革小物の裏革などに使われます。

 

牛革よりも繊維が細かいので、バフィング(サンドペーパーがけ)することで美しい起毛革にして活用もされています。

 

【PARLEY(パーリィー)】エルク ボディバッグ

【PARLEY(パーリィー)】エルク ボディバッグ 裏地ピッグスエード使用

 

 

 

(4)馬(ホース、コードバン)

馬は牛と違って運動量が格段に多いので、余分な脂肪が少なく革が薄め、軽くてしなやかな特徴があります。その中でも二種類あって、お尻の部分にある緻密な繊維構造の革を「コードバン」、それ以外の胴部分の革は「ホース」と呼ばれます。

 

 

◆ホース

馬は繊維の密度が牛と同程度ありますが、薄くなってもしなやかさを保つので、軽いことが特徴と言われます。

動き回っていることから、個体にはややキズが多くなっています。

 

【azzuni(アッズーニ)】B4も入る馬革のトートバッグ M Capa

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◆コードバン

馬の臀部(お尻)部分に集まった、緻密な繊維構造の革。一頭からの採取量わずか2枚ですが、すべての馬から必ず取れるわけではありません。革の裏側を丁寧に削っていくと、厚さ2mmのコードバン層が現れます。

 

コードバンは強靭な繊維をもつため「革の宝石」とも言われています。世界的にも希少であり、高級素材としてベルト、革小物、ランドセルなどに使われます。

 

【FESON(フェソン)】コードバン切目靴べらキーホルダー

【FESON(フェソン)】コードバン切目靴べらキーホルダー

 

 

 

(5)鹿(ディア)

ホースと同様、薄手で軽いのが鹿革です。ただキズが多いので、銀面を剥いで使われることが多く、代表的なのがカメラなどを拭く“セーム革”です。漆模様を描いた「甲州印伝」のベースになっている革は、実は鹿革です。

牛革とは違ってふわっとした質感としなやかさで、ウエア、手袋などに使われることが多いです。

 

印伝ポシェット

「印伝」ポシェット

 

 

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◆参考資料
日本皮革産業連合会 販売研修用テキスト http://www.jlia.or.jp/


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また次回もお楽しみに。


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