「日本での、革のうまれるまち探訪」その1
<姫路市、たつの市>

革の知恵袋

「KAWANOWA」は、「革の輪」という意味を持つだけに本革の製品が数多く登場しています。
前回の「革の知恵袋」でもお伝えさせていただいたように、革という素材はかばんに仕立てるうえでも大きなメリットがあります。

まず「丈夫」であること。身に着けるものの素材の中では強度が高く、実は革は火にも強いんです。次に「経年変化」が楽しめるところ。手入れをしながら味出しをして自分らしい革に育てることもできますね。

また「切り口がほつれない」ところ。なるほど〜と思った方も多いのでは。布は切れ端のしまつをしないといけませんものね。革にはそれがありません。

他にも「触れると温かみがある」とかいろいろメリットはありますが、かばんを作るうえで革の存在は不可欠と言えます。

それでは、「革ってどこが産地なの?」と聞かれたら、答えられる方はそう多くはないかもしれません。今回は「革のうまれるまち」に迫ってみます。

1.日本の革づくりの中心地「兵庫県姫路市・たつの市」

まずは、日本での革づくりを考える上で真っ先に挙がるエリアは、兵庫県の「姫路市」と「たつの市」。2つは隣り合った市で、革の産地としてはとても古い歴史があります。

平安時代の書物からは、播磨地方(神戸市や姫路市を中心とした領域)にて革の製造が行われていたことが確認されているそうです。「日本の革文化はヨーロッパに比べてまだ浅い」と思っている方も多いと思いますが、実は「武具、甲冑、馬具、たいこ」などに、革は不可欠なものでした。江戸時代は藩の政策としても、革づくりを奨励していたようです。

ではなぜこの地域で皮革産業が盛んになったのでしょうか。
そこにはいくつかの重要な背景があるようです。

まずは革を鞣(なめ)す時には大量の水が必要なので、それを供給する「川」の存在が大きいです。市内には「市川」「揖保川」「中川」など水量豊富な川がいくつも流れています。

姫路を流れる「市川」

加えて、牛革はというのはびっくりするほど大きいので、その革を干しておく広い「河原」の存在があったようです。とにかく革を作るためには、広大な土地と豊富な水が必要なのです。

また革を干すのに適した温暖な気候であり、生皮の保存に必要な「塩」の産地が近かったこと。現在でも「赤穂の塩」は有名ですよね。

さらには西日本では、当時から多くの「牛」が飼われていました。確かに、関西は「牛肉文化」、東京は「豚肉文化」と言われます。そんなところにも革が生まれる背景があったのですね。

そして「大阪」や「京都」といった当時の商業中心地が比較的近かったことなどが、この地域での“革産業”を加速させた背景と言われています。

2.タンナーさんたちが仕入れる「原皮」とは

牛革の生産量に関しては、兵庫県が日本で一番であり、そのシェアは約70%にものぼります。特に多いのは「牛革」のなめし。他の動物に比べると格段にサイズが大きいので、タンナーさんも他のエリアとは「ドラム」のサイズや乾燥所などの規模が違います。中には「コードバン」などの高級な革を専門になめすタンナーさんも存在しています。

大型のドラム、サイズが他のエリアよりも大きいんだとか

現在、大小200件以上の工場が集積しているという、まさに「革のまち」。一部はヨーロッパなどに輸出もされており、日本の高い製革技術が世界に認められています。

革の原料となる「牛の原皮(なめす前の状態の皮)」は、北米やオーストラリアから9割以上が輸入されています。世界的に見ても、この2国は牛肉の生産・消費が群を抜いています。

もちろん国内の牛から鞣される革も、最近増えて来ています(それを地生(じなま)と呼びます)。
それこそ、三大ブランド牛と言われる「松坂牛」も、以前は皮に含まれる脂が多くて使いにくい原皮と言われていました。けれども最近では、タンナーさんの技術の進歩で、使えば使うほどツヤが出る革になり、「食べても、革としてもナイス(笑)」なブランド牛となりました。

ただ、このところ革製品の値上げが相次いでいますが、その背景は北米、オーストラリアの2国からの原皮の輸出量が減ってきているのが要因。タンナーさんの間では、「上質な原皮が手に入りくくなった」という声が聞こえます。

革の原皮は国際的な取引なので、原皮相場として変化していくのが常。
その理由として、世界的な「ヘルシー志向」によって牛肉の需要そのものが減っていること。また中国でのライフスタイルの高級志向から、車の「シート」や「ソファ」といった革製品へのニーズが急激に高まっていること。「革=高級なもの」といった昔からのイメージがあるのだそうです。

どうしても、世界の消費事情に振り回されてしまうところが、“食肉の副産物”たるゆえん。各タンナー、各メーカーも独自の工夫を重ねて、その原料の高騰に負けることなく乗り越えようとしています。

とはいえ日本の革づくりはちょうど“面白くなってきた”ところ。若手のレザークリエイターが登場したり、今までありえなかった“アッ”と驚くような革が生まれたり。決して十年一日のような仕事をしているわけではありません。

 

さて姫路の次は、東京へ。「革の産地が東京?」ってにわかには信じられませんよね。
タンナーさんに潜入もしてきましたので、そちらもぜひお楽しみに。

◆参考URL
日本タンナーズ協会(http://www.tcj.jibasan.or.jp/
TIME&EFFORT(http://timeandeffort.jlia.or.jp/
姫路電子じばさん館(http://himeji.jibasan.jp/


KAWANOWAは、「革とオトナのいい関係」を作っていくサイトです。
革についての、知られざる知識あれこれをこれからもお伝えしていきます。
また次回もお楽しみに。

「“良い革製品”てなんだろう?」に答えて頂きました その3
答えるひと:株式会社コロンブス 市川貴男さん

革の知恵袋


前回に引き続き、国内でレザーケア商品のトップシェアを誇る螢灰蹈鵐屮垢了埓遒気鵑砲答え頂きます。

さて、この特集(その1その2)はfacebookページでもご案内しておりますが、革好きな方から多くのシェアをいただくなど、とても嬉しく思っております。意外と知っているようでいて、実はプロの方も知らなかった知識。このコーナーで革に対する「誤解」が解ける機会になることは、とてもありがたく思います。

今回は最後ということもあり、市川さんにはちょっと意地悪(笑)な質問も投げかけてみました。先日売場で見かけた“あの革財布”についてです。さて、どうお答えしていただけるのでしょうか。

Q.合皮と違って天然の革ものを使うということには、どんなメリット・デメリットがありますか?

自分としては、「合皮が悪い、革がいい」とは決して思いません。両方にいいところもあれば残念な部分もあわせ持っています。

ただ大きく言えることは、合皮素材は「買った瞬間が品質のピークで、あとは右肩下がり」ということ。前回お伝えした素材の「加水分解」は徐々に始まっており、ケアをしても何をしてもそれは避けられません。

けれど革ものは、買った瞬間はちょっと固かったりしても、クリームやオイルで保湿し続けることで「革なじみ」や「経年変化」を“右肩上がり”で楽しむことができます。大切に磨き続けて自分ならではの味わいに育てたり、革の染め替えを楽しんだりも可能です。

革のケアに関するページでもご紹介した、ケアクリーム

革は合皮より高価格であるにも関わらず、取り扱いはより慎重にしないといけません。 「人の肌」と同じように考えるとわかりやすいと思います。 毎晩ファンデーションを落とし、化粧水や乳液で保湿しますよね。放っておいてはカサカサになりますし汚れもつく。 それと同じだと思えばわかりやすいのでは。

「革」そのもののメリット・デメリットは、以下のようにまとめられるでしょう。良いことだけでなく、その反対の性質も知っておくのが大切です。もともと「生きていた動物の皮」だからこそ、メリット・デメリットがあるんです。

【メリット】

・革の持つ表面感の美しさ、高級感
・肌触りのよさ、気持ちよさ
・素材そのものの持つあたたかさ、温もり感
・吸湿性、放湿性が高い
・弾性を持つので伸び縮みが可能
・切った目がほころんだりしない

 

【デメリット】

・革の一枚一枚ごとに「個体の差」がある
・同じ一枚の革のなかにも「部位の差」がある
・染色された革は色落ちする可能性がある
・湿気を取り込むためカビが生えやすい
・濡れたときに熱に弱い
・一部に「臭い」の強いものがある

 

Q.バッグのどこを見ると、「いい革製品」だとわかるのでしょうか?

こちらは良い革製品の例。ステッチに注目。

わかりやすいところでは、まずステッチ(縫い方)を見て下さい。基本的に曲がっていたりミシンが飛んでいたりするのは論外ですね。
あと、「革のデメリット」のところで「部位の差」があると申し上げましたが、革はもともと大きな牛の身体を守っていた皮膚なので、一枚の中にも“背中部分”、“腰部分”“おなか部分”など、部位によっても革の質感が変わります。

例えば革で最も繊維が締まって伸びにくく、革質が良いのは「背中からお尻」にかけての部分です。ここの革は耐久性が高く、広い面積のかばんやバッグなどに向いています。

逆に、革の端にあるお腹の部分は、牛の胃を支えて伸縮する部分であり、柔らかく伸びやすい革です。ここをバッグの肩ヒモなどに使ってしまうと、あっという間に力がかかって伸びてしまいます。

伸縮してシワの多い“おなか”部分の革を、むやみに目立つ部分(バッグの表や靴の甲など)に使っていたりするのは、決していい革製品とは言えません。 一枚の革全体のクオリティをみて、どこの部分に対しどうバッグや靴の型を取るか、ということを見極めるのも「職人さん」たちの磨かれた技でもあります。

Q.先日、街の雑貨店で「2,000円の革財布」を見つけました。あの安いものと、KAWANOWAの革ものはどこが違うんですか?

まず、2,000の革財布をパッと見て、「いいなー」と思えましたか?
せっかく「革もの」を持つのであれば、自分で「これはいい」と満足できる“感性”に訴える部分も大切にしてほしいです。「機能性」や「ブランドステイタス」というものもありますが、ケアし続ければ10年以上もつものも多いので、「革もの」ほど、持つ人の“人生”に寄り添うものはないのではないと思います。

さて2,000円の革財布について。
まず安い理由のひとつは「革の質」だと思います。
前述しましたように、革はすべての部分を有効に使えるわけではなく、お腹の部分や頭の部分などは使われずにロスになってしまうことが多いのです。そのロス部分を集めて作った可能性がひとつ。

二つめは工賃の安いアジアでの製造。
最近では中国など日本以上に職人さんの腕が上がっているところもありますが、2,000円ではさすがに難しいでしょう。バングラデシュやミャンマーといった「特恵国」という関税が安い国で作り、輸入するというケースも増えています。
繊細なものづくりはまだ成熟していないので、そのような国で作った可能性が高ければ、クオリティがやや気になるところです。

三つめは国内の“作家さんの手作り品”。
自作して自分で売る人が増えていますので、彼らがほとんど利益を出さず原価のまま販売しているケースもあるでしょう。主婦の方や学生などが作っている場合は、テキストなどを読んで見よう見まねで作ったというパターンもありそうです。

KAWANOWAが上記と違うのは、「革の質」「職人技」、そしてきちんと利益を取ることで循環する「流通の輪」です。ものづくりの長い歴史のなかで、メーカーは技術力を磨き、革の目利きをし、より良いものを作ろうと努力を重ねてきました。

例えば革財布であれば、職人技の「コバ塗り」の丁寧さはよく見て下さい。革の切り口から水が浸入してひび割れしないよう、塗料を重ねます。一度ではなく3度4度と塗り重ね、ふっくら盛り上がっている職人技のコバ塗りは本当にすばらしい。

このサイトで紹介しているメーカーは、大きな声では言えませんが、実は誰でも知っているアパレルブランドのバッグや財布を作っていたりする影の立役者たち。
百貨店の店頭で数万円で販売されているクオリティが、ここではオリジナルブランドということで、リーズナブルに提供されています。

このサイトに決して安いものは並んでいませんが、持った時の満足感、加えてその後に“使い込んでいく”ことを楽しめるかどうかが大きな違いだと思います。
5年10年楽しむのであれば、決して高くはないですよ。革ものを一度ならず二度三度と使ってみて、ぜひ自分だけの一本に出会ってほしいです。

以上、市川さんによる「“良い革製品”てなんだろう?」のコーナーでした。革と一言で言っても、様々な歴史やものづくりの背景がてんこ盛りなんですね。知りませんでした。
革とは“人生を共に歩むもの”と言っては恰好良すぎでしょうか。使い捨てではなく、ケアをしながらじっくりと付き合うもの、という言葉を肝に銘じたインタビューでした。

◆協力 株式会社コロンブス 企画室 市川貴男さん、小高公次さん
東京都台東区寿4-16-7 03-3844-7111
http://www.columbus.co.jp/

KAWANOWAは、「革とオトナのいい関係」を作っていくサイトです。
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文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝